第605話 学校で
週が明けて俺は学校にきているが、お昼休みになりいつもと違う事が起きている。
いつものように真司と隼人とで昼ごはんを食べているのだが、なぜか今日は四人いる。
「先輩、十七階層ってどのぐらい儲かるんですか? やっぱり外車とか買えちゃうんですか? まさかタワーマンションとか買えちゃったりします?」
「いや、さすがにタワーマンションは無理だろ」
「え〜そんな事言って、本当は一カ月で買えたりするんじゃないですか? 私も早くそうなりたいんです。だから早くお願いしますね」
「ああ、そのうちな」
なぜか今日は野村理香子が昼になったと同時に現れて、俺達と一緒にご飯を食べている。
もしかしてこの子、クラスに友達がいないんだろうか?
さすがにボッチな後輩を追い返すのも良心が痛むのでこうして四人でご飯を食べる事にしたが、さっきから聞いてくる事はダンジョンのお金事情ばっかりだ。
前にもお金がないような事を言っていたので、どうしてもダンジョンで稼ぎたいのだろう。
「理香子ちゃん、よかったら俺が二階層に連れて行ってあげてもいいぜ。これでも俺達だって十二階層組だから頼ってもらっていいんだぜ〜」
若干隼人が滑り気味だが、花園さんから距離をおかれているので、隼人が他の女の子に声をかけたくなる気持ちもわからなくはない。
「え〜隼人先輩、ちょっと目つきがエロいです。ダンジョンに一緒に潜ったらゴブリンより隼人先輩に注意しないといけなくなりそうなので、海斗先輩で大丈夫で〜す」
「なんで海斗ばっかり……こいつ超絶リア充だぞ?」
「もちろん知ってますよ」
「俺もリア充になりた〜い!」
「頑張ってください」
隼人が完全に空回りしている気がする。
俺としては野村さんも結構可愛いし隼人と一緒に潜ればいい感じなんじゃないかと思うのだが、本人には一向にその気がなさそうだ。
それにしても、今日はやけに教室の温度が低い気がする。
もうすぐ五月というのにどうしたんだろう。
特に背中が寒い……
「海斗先輩、今度よかったら一緒にご飯にでも行きませんか? 私お金がないので奢ってもらえると嬉しいんですけど」
「いや、行かないけど、なんでそんなにお金がないのか聞いてもいいか? 答え難かったらいいけど」
「え〜海斗先輩には二階層に連れていってもらいますし、特別に教えてあげますね。よくある事なんですけど私、お父さんがいないんです」
「うん……」
「それで、弟と妹がいるんです。お母さんも頑張ってくれてるんですけど、女手ひとつで子供三人は結構きついんです。それで、弟達も将来は大学まで進学させてやりたいし、私が稼がないといけないんですよ〜」
「そうなんだ」
「普通のバイトも考えたんですけど、放課後と土日で高校生が稼げる金額はしれてるじゃないですか。だからどうしても探索者として稼げるようになりたいんです。だから今のままじゃダメなんです」
ああ……やっぱりこの子お金にはシビアな感じがしたけど本当は、いい子だな。
今時弟と妹のために稼ぎたいなんてなかなかないと思う。
高校生になったばかりで、女の子なんだから自分にも色々お金を使いたいだろうに。
「とりあえず月に十万円以上は稼げるようになりたいんです」
「ううっ……理香子ちゃ〜ん。君の事を誤解していたよ。なんていい子なんだ。ど〜んと俺を頼ってくれていいんだぞ。俺が絶対に十万円以上稼げるようにしてあげるから〜」
「やっぱり隼人先輩、言い方がエロいです。なんかそういうのはちょっと……」
隼人も根はいい奴だからな。
この話を聞いてほっとけないんだろうな。
それにしてもやっぱり足下が冷えてきたな。なぜか床が底冷えしている気がする。
季節外れの寒波がきたのか ? 天気予報を見ておけばよかったかもな。
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