第600話 悪夢の続き
昨日は夢の中で春香と待ち合わせをしたが、家を出るのが遅くなって、急いで待ち合わせ場所まで走り、既に到着していた水色のワンピースの春香に背後から声をかけだが、春香が振り向いた瞬間、なぜかそこにいたのは春香ではなく母さんだった。
普段夢の内容は目が覚めるとすぐに忘れてしまうのに、朝目を覚ましてしばらく経っても鮮明に覚えていた。
春香が母さんに……ある意味悪夢だ……
今度から本当に春香と同じワンピースを買うのはやめてほしい。
憂鬱な気分で朝を迎えたが、気を取り直してダンジョンに向かう。
「おはよう」
「おはよう。なんか元気ないわね。春香と喧嘩でもしたの?」
「いや、喧嘩なんかしてないよ。むしろすぐにでも会って記憶を書き換えたい」
「よくわからないけど、集中しないとまたトラップにハマるわよ」
「わかってる」
「海斗、悩みがあるなら私も相談にのるぞ?」
「いや、本当に大丈夫です。ありがとうございます」
思った以上に夢と昨日の出来事による精神汚染が進んでいたようで二人から心配されてしまった。
こんな事でパーティメンバーに心配をかけるわけにはいかないな。
今日はとにかく半分より先に進む事を目標にして十七階層へと向かう。
「ルシェ、ご主人様が少し元気がないように見えるんだけど、どう思う?」
「言われてみればそう見えないこともないな。まああれだろ。どうせ春香に愛想尽かされかけているんだろ」
「そうでしょうか? 昨日もトラップにハマってしまいましたし、心配ですね」
「それだけ春香とうまくいっていない証拠かもな」
「それならいいのですが」
「今がチャンスかもな」
「そうですね!」
いつものようにシルとルシェがコソコソやっているので、俺もいつものようにスルーしておく。
しばらく歩いているとシルが声をかけてきた。
「ご主人様、何か悩み事があるのでしたらいつでも話してくださいね。必ず私が力になります」
「ああ、ありがとう。やっぱりシルは優しいな」
「おい、昨日もトラップにハマってたし大丈夫なのか? わたしも相談にのってやってもいいぞ。どうせ春香の事だろ?」
「な……なにを言ってるんだよ。別に春香は関係ない。いや、関係なくはないが、直接は関係ない。だけど、ルシェもありがとうな」
この二人にまで心配をかけるとは、よっぽど顔と態度に出てたんだな。
本当に反省だ。
「ご主人様、前方に敵モンスター三体です」
「よし! 慎重にいくぞ! 俺とあいりさんがペアでシルとルシェで一体ずつ頼んだぞ!」
俺には頼れる仲間がいる。
俺のくだらない悩みを真剣に心配してくれるパーティメンバーとサーバントがいる。
テンション下げていた自分が恥ずかしい。
俺はテンションと集中力を最大まで引き上げてドラゴンへと向かっていく。
頼れる仲間と戦う俺にとってワイバーン三体などものの数ではなかった。
それぞれのメンバーがスキルを発動して瞬殺する事に成功した。
「やったな!」
「はい、ご主人様もお見事でした」
「シルとルシェも流石だよ」
「ふふん、このぐらい当たり前だろ」
ああ……やっぱりダンジョンはいいな。
ワイバーンを倒した俺はすっかり悪夢の影響から脱する事に成功し、いつも以上の集中力を取り戻した。
「みんな、今日は絶対に半分を超えて探索を進めるぞ!」
カオリンのためにもくだらない事に囚われず頑張らないといけない。
「なんか急に元気になったな」
「そうですね。私達の思いが通じたのでしょうか?」
「やっぱりわたし達がいないとあいつはダメだな」
「そうですね」
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