第591話 ストームドラゴン
ドラゴンを中心に砂塵が舞い上がっており、そのせいで一層視界が限定されてしまっている。
俺とベルリアは攻撃態勢に入るが、目の前のドラゴンは結構なスピードで後方へと移動した。
明らかに砂嵐の影響を受けていない。
つまりはこの砂嵐の中を普通に移動できるという事だ。
それに引き換え俺達は、明らかに砂嵐の影響を受けて動きが鈍く限定されている。
ベルリアが下がったドラゴンに向けて追撃すべく追っていき、剣を振るうが、あっさりと避けられてしまった。
砂嵐の影響と指の間から覗く僅かな視界のせいでベルリアの刀にいつものキレがない。
俺はベルリアの攻撃が躱されたのを見てすぐさま『ドラグナー』を構えて引き金を引く。
弾丸が蒼い光の糸を引いてドラゴンへと放たれたが、ドラゴンに着弾する少し手前で、蒼い光の糸がブレた。
いつもは一直線の糸を引くのに今回に限って、着弾間際でブレて、狙った箇所とは違う場所に着弾した。
「グァアアア〜!」
どうやら傷を与える事には成功したが、残念ながら狙いが逸れたせいで致命傷とはならず倒すには至らなかった。
俺の攻撃に完全にこちらを捕捉したドラゴンが襲いかかってくる。
今の俺は空いている片手に『ドラグナー』を持っている為に、敵の攻撃を防ぐ術を持たない。
逃げるしかない。
そう思い、回避行動を取ろうとするが、激しい砂塵のせいで動きが阻害されてしまう。
「マイロード! お任せください!」
俺とドラゴンの間にベルリアが割って入り、炎の魔刀を振るう。
魔刀を巧みに振るい、ドラゴンの攻撃をいなしているが、ベルリアも二刀の時のようにはいかず、防戦一方になってしまっている。
片手と視覚にハンデを負っているので当然だ。
俺もバルザードに武器を持ち替えてベルリアの横に立ちドラゴンに応戦する。
ベルリアの風の魔刀の代わりを俺が果たす。
ベルリアが攻撃をいなしてくれている間に俺が攻撃をしかけるが、剣を普通に奮っても周りを取り巻いている、風と砂塵で阻害されダメージをうまく与える事ができない。
ドラグナーの弾丸もこの風と砂塵の壁に歪められたのだろう。
バルザードに切断のイメージをのせて至近距離から斬撃を飛ばす。
斬撃が風と砂塵を斬り裂きドラゴンの肉をも断つが、やはり消滅にまでは至らない。
その時だった。
ドラゴンを取り巻き上へと巻き上がっていた砂塵がねじ曲がり、生き物のように俺とベルリアに向かって襲いかかってきた。
「くっううう」
呼吸ができない上に風と砂の圧力で押し戻される。
即席のゴーグル越しでもほとんど視界がゼロになってしまった。
その場から身動きが取れないので、この状態で襲われたらまずいが、敵がこの機を逃すとは思えない。
俺は視界ゼロ状態なので即席ゴーグルを諦め、左手を『ドラグナー』に持ち替えた。
この圧の中でバルザードをまともに振るう事はできそうにないが『ドラグナー』
を放つことぐらいはできる。
俺は何も見えない前方に向かって『ドラグナー』を放つ。
当たらなくても牽制になればいい。
ただ、今の状態では前方の状況が確認できないのでこれ以上の打つ手がない。
すぐ隣にベルリアがいる事だけはわかるが、ベルリアが徐々に前方へと踏み出している気がする。
ベルリアがこの砂嵐の中攻撃に転じようとしているようだ。
俺も少しでもベルリアのサポートすべく、俺が今できる事を必死で考えた。
『ウォーターボール』
ベルリアに向けて、俺が唯一使用できる魔法『ウォーターボール』を発動した。
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