第584話 学校は青春で彩られている?

「それじゃあ、今日はありがとう。また明日ね」

「ああ、また明日」


俺は、無事プレゼントを渡してから、春香を家まで送って帰路についた。


「ただいま」

「お帰り。どうだったのよ」

「どうだったって何が?」

「決まってるじゃない、春香ちゃんとのデートよ」

「デートではないけど、まあご飯もおいしかったし、プレゼントも喜んでもらえたからよかったよ」

「春香ちゃん、プレゼントの時計を見て何か言ってた?」

「え〜っと、ずっとつけてくれるって言ってだけど」

「ふ〜ん。そうか〜。へ〜。うんうん。まあ良かったじゃない」


母親の反応がちょっと気持ち悪いが、今日の俺はすこぶる機嫌がいいので全く気にならない。

お風呂に入った後は幸せな気分に浸りながら寝ようとしていたら春香から今日のお礼の連絡が入っていた。


『今日は今までの誕生日の中で一番嬉しかったです』


あ〜もうこれは永久保存だ。

嘘でも、これは嬉しすぎる。

俺は間違って消したりする事のないように早速スクリーンショットを三枚撮って保存しておいた。

これは俺にとっての宝物だ。

春香にプレゼントを贈ったはずなのに、逆に俺がプレゼントをもらったような気になってしまう。

今日は本当にいい一日になったので、すぐに眠りについたが、夢の中でも幸せ一杯で睡眠の質もいつもよりもずっと良かった気がする。

翌朝、気分爽快で目を覚まして、学校へ向かった。


「おう!」

「お、おう」

「海斗、今日はいつもよりテンション高いな。何かあったのか?」

「隼人、昨日は葛城さんの誕生日だろ」

「ああ、そうだったな。それでか。ところでどうだったんだよ?」

「うん、ご飯も美味しくて楽しかったし、プレゼントも喜んでもらえた」

「ご飯はどこに行ったんだ?」

「アモーレっていうイタリア料理のお店だよ」

「アモーレ……」

「どうした? 行ったことあるのか?」

「俺が行ったことなんかあるわけないだろ」

「それじゃあ花園さん誘って今度行ってみればいいんじゃないか? いいお店だったぞ」

「いや、俺にはアモーレはハードル高すぎるから無理だな」


確かに、女の子と二人でイタリアンレストランに入るのは少しハードルが高い気もしなくもないが、あのお店なら花園さんも喜んでくれると思うけどな〜。


「ところでプレゼントは何にしたんだよ」

「いろいろ迷ったんだけど腕時計にした」

「腕時計……。そ、そうなのか。それで葛城さんはなんて言ってたんだ?」

「ずっとつけてくれるって」


気になって春香の方に目をやり、手首のあたりを確認してみるが、腕には俺が贈った時計がつけられていた。

やっぱり似合ってるな。プレゼントして良かった。


「海斗……。早く付き合えよ。いやもう婚約しろよ」

「真司、何言ってるんだ。話が突飛すぎるだろ。俺だって付き合えるもんだったらすぐにでも付き合いたいけど、自分で言うのもあれだけど俺と春香は今結構いい感じだと思うんだよ」

「じゃあいいじゃないか」

「いやよくないだろ。中途半端に告白して断られたら、せっかく築いた春香との関係が全て無くなってしまうかもしれないんだぞ。そんな事は俺にはできない!」

「海斗、俺が保証するけど絶対上手くいくって。間違いない。時計をずっとつけてくれるんだろ」

「ああ、今日もつけてくれてるみたいだ」

「そうだろ? じゃあ間違いないって」

「もうそれはいいって。俺の事より隼人も花園さんとどうなんだよ」

「毎日連絡は取ってるぞ。俺が夜に連絡したら、だいたい朝には返してくれる感じだな。花園さん夜は早く寝るみたいで返信はいつも翌朝だな」


隼人、もしかしてそれって避けられたりしてるわけじゃないよな。

朝返信がくるそうだからそれはないか。


「どんな返信が来るんだ?」

「だいたい朝の挨拶かな」

「挨拶っておはようとか?」

「そう『昨日は寝てました。おはようございます』だいたいいつもこんな感じだな」

「そうか……。頑張れ!」


もしかしたら花園さんがクールというか淡白なだけかもしれないので隼人の運命が決したとも言えないかもしれない。隼人頑張れ!

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