第578話 金属竜

俺は自らを鼓舞してテンションを上げ、探索を続けているが、まだ竜の革以外には何もドロップしていない。


「やっぱり、そう簡単にドロップしないな〜」

「海斗と一緒だと特にね」

「ああ、本当に稀だな」


俺のせいなのか、サーバントである悪魔二人のせいかはわからないが、身に覚えがあるのでミク達の言い分に言い返す事はできない。


「ご主人様、モンスター五体です。数が多いのでご注意ください」


五体か。この階層では今までの最大数だな。


「一人一体を相手にいこうか。ミクはスナッチと一緒に俺とあいりさんのフォローを頼んだ」


前衛四人が前に立ちルシェとミクが後ろについてくる形で慎重に進んで行く。


「あ〜五体ともか……」


進んだ先にいたのは、想定外だったが五体全てが金属竜だった。

この時点でスナッチは、牽制役としてほぼ無力となり、ミクのフォローも他の竜ほど期待できなくなってしまった。

シルはそれほど苦にしないだろうが、他の四人は相当に相性が悪い。


「ちょっと硬くなったぐらいがなんだ! 調子に乗るなよ蜥蜴風情が! どうせ時間をかけて燃えるだけだ! 結果は一緒なんだからさっさと燃えてしまえ『破滅の獄炎』」


ルシェが速攻でスキルを発動して金属竜を炎で覆い尽くす。

これで一体の足は完全に止まったので、俺達が頑張るしかないが、おそらく倒すのはルシェのドラゴンが最後になるな。

俺が金属竜の取れる作戦は二つ。

一つはバルザードに切断のイメージをのせて斬り落とす。

もう一つはある程度近づいた位置から『ドラグナー』で狙い撃つ。

おそらく、どちらの方法でもあの外装を破る事はできるはずだ。

俺は金属竜の一体に向かって駆けて行き、少し手前で足を止める。

俺が選択したのは『ドラグナー』での一撃。


「これで決まってくれ!」


狙いを金属竜の頭部に定めて『ドラグナー』の引き金を引く。

『ドラグナー』が蒼い光を発し、蒼い光の糸を引いてドラゴンに向かって弾が放たれる。 

弾丸は見事にドラゴンの頭部に命中しそのまま勢いを弱める事なくドラゴン頭に風穴を開ける事に成功した。


「やった」


おそらく、金属竜相手でも効果を発揮するだろうとは思っていたが、一抹の不安はあったのでうまく倒せて良かった。

今回バルザードではなく『ドラグナー』を選択したのは、少しでも早く倒す為にリスクを減らしたかったからだ。

早く倒す事で俺がみんなのフォローに入れる状況を作りたかった。

近接でバルザードを使えば、反撃を受ける可能性も増える。イレギュラーな事もあり得るので『ドラグナー』を選択したが、今回その選択は正しかったようで上手くいった。

俺はすぐにあいりさんのフォローへと走る。


「ガァアアア〜!」


金属竜の咆哮と共にベルリアが相手にしているドラゴンが口から無数の金属のニードルをベルリアに向けて放った。


「あぶないッ!」


スナッチのヘッジホッグをスケールアップしたような攻撃だ。

ベルリアは金属製のニードルが放たれた瞬間地面を蹴り宙へ舞いくるっと回転して何事もなかったかのように着地した。

ベルリアだから躱すことができたが、あの攻撃はやばい。

あれをくらったらナイトブリンガーはともかくそれ以外の場所は完全に蜂の巣になってしまう。

あの距離で放たれたら、俺は……

考えただけでも恐ろしい。


『斬鉄撃』


あいりさんが必殺の一撃を放つが、ドラゴンも後方へと下がりあいりさんの攻撃を躱す。あいりさんも更に踏み込んで追撃するが、今度は見事に金属竜の胴体部分に傷を負わせた。

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