第573話 不燃物

氷竜を一体倒す事に成功したが、サーバント三人はまだ戦っている。

ベルリアは、俺達とほぼ同じタイミングでもう一体の氷竜との交戦に入ったが、氷竜がベルリアとの戦いの最中、俺に向けて放ったのと同じスキルを発動した。

スキルにより地表が凍ってしまったが、なぜかベルリアは俺のように派手に転ぶことはなく、空中へと華麗にジャンプして避けている。

ほぼ俺と同じシチュエーションなのに何が違うんだろうか。

あいりさんも転ばなかったし何か理由があるなら知りたい。

空中へと舞ったベルリアが氷竜へと攻撃をかける。


「ヘルブレイド!」


黒い炎の斬撃が氷竜に襲いかかり、大きなダメージを与える事に成功した。

「ヘルブレイド」は黒くても炎には違いないので氷竜とは相性がいいようだ。


「これで終わりです。あなたは戦う相手を間違えたようですね」


やたらと上からの発言を残してベルリアが魔刀を振るいとどめをさした。


「その外皮は飾りでは無かったようですね。仕方がありません。我が敵を穿て神槍ラジュネイト」


どうやらシルは最初に『神の雷撃』を放ったようだが、金属製の外皮を持つ竜には相性が良くなかったようで、竜の背中部分を真っ黒に焦げさせてはいるが、一撃ではしとめきれなかったらしい。

今度は確実にしとめる為にシルは神槍の一撃を放ったが、当然の如く今度はあっさりと消滅してしまった。

ただ、シルの雷撃を一撃だけでも耐え切ったのは敵ながら称賛に値すると思う。


「ご主人様、思ったよりも手間取ってしまいました」

「ああ、全然大丈夫だぞ。まだまだ時間がかかりそうなのがいるし」


戦闘はほぼ終わっているが、もう一体の金属竜は相変わらず獄炎に焼かれている。

なまじ耐性が高いだけに、俺達の戦闘が終了してもずっと燃えている。


「ルシェ、だから言っただろ。絶対時間がかかるって」

「うるさい、うるさい! たまたま時間がかかるっているだけだ。たまたまだ!」

「いや、普通に考えて金属が燃え切るのには時間がかかるだろ。どう考えても氷竜の方が相性は良かったと思うけど」

「くっ‥‥減らず口ばっかり」


どう考えても俺のは減らず口じゃなくて正論だと思うけど、これ以上突っ込むとルシェが拗ねるのがわかっているのでスルーしておく。

それにしてもなかなか燃えきらないな。


「ベルリアだったらどうやって倒す?」

「マイロード、もちろん二刀での『アクセルブースト』で首を落としてやります」

「まあ、武器もパワーアップしたしいけるかもしれないな」


氷竜は、俺のピンチはあったもののそれなりに上手く倒す事が出来たと思うが、金属竜は結構苦戦しそうだな。

バルザードに切断のイメージをのせればいけるか?

冬彦さん達が使っていた爆弾とかも有効かもしれないな。


「シル、ルシェのは、なかなか終わらないな」

「ご主人様、相性というものがありますから、大目に見てあげてください」

「マイロード、姫様にも意地というものがあるのです。是が非でも獄炎で焼き切るという気概を褒め称えるべきかと」

「そういうものかな」

「そういうものです」


おそらく時間にして五分は燃えていたのではないだろうか?

ついに金属竜は獄炎に消し炭にされてしまった。


「どうだ、見たか!」

「ああ、しっかり見させてもらったよ」

「ふん、金属だろうがなんだろうがわたしの獄炎に敵じゃないな」

「まあ、たしかに敵ではなかったな」

「次もわたしが燃やし尽くしてやるよ」


次に金属竜が現れたら、ルシェ以外に担当してもらう事にしようと思う。

先を急いでいるというのにルシェのせいで思いの外時間をくってしまった。

俺達は魔核を回収して先に進む事にする。


「おい、お腹がすいた」

「ご主人様私もお腹が空きました」

「わかってるよ」


俺はシルのために魔核三個ずつを二人に渡し、ベルリアにもおまけで一個渡しておいた。

さすがに一回の戦闘で魔核九個はキツいのでベルリアには、少しだけ我慢してもらう事にする。

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