第564話 プレゼント
俺は店員さんに案内されて指輪をいくつか見ているが、指輪の良し悪しは正直よくわからない。
前回春香に贈った指輪は特に似合っていたと思うけど、色ぐらいしか違いがわからない。
それに高校生である春香が複数の指輪を身につけているイメージもあまり湧かない。
「やっぱり、前回指輪だったし指輪じゃないのがいいと思うんですよね。ブレスレットも以前贈ったのでそれ以外がいいと思うんです」
「そうですか。それではネックレスか時計はいかがでしょうか?」
ネックレスか時計。ネックレスも春香には似合うと思うけど、時計はいい気がする。学校でも使えるしプレゼントには最適かもしれない。
春香がどんな時計をしていたかは残念ながら思い出せないが、朧げながら時計をしていたような記憶はある。
「それじゃあ、時計を見せてもらってもいいですか?」
「はい、もちろんです」
時計の専門店ではないので、そこまで数はないが女性らしい時計が並んでいる。
「ご予算はどのくらいをお考えでしょうか?」
「そうですね。二〜三万円でもありますか?」
「もちろんです。彼女さんのイメージだとこの時計とかいかがでしょうか?」
そう言って俺の前に店員さんが三つの時計を並べてくれた。
それぞれ文字盤が水色、白色、ピンクの時計だが、ジュエリーショップの時計だからか何となくお洒落に見える。
「それぞれこちらから一万五千円、二万九千円、三万八千円になります」
値段はどれも出せない事は無い値段だ。
三つの時計を前に春香をイメージしてみるが、どの時計も似合う気がする。春香がつければどんな時計でも輝いて見える。
ただ、俺の春香のイメージは白。白のワンピースも最高に似合っていたし白が一番しっくりくる気がする。
「これってどうですかね」
「彼女さんのイメージにぴったりだと思います。清楚で清潔なイメージですよ」
「そうですよね。それじゃあこれをお願いします」
結局、白色の文字盤の時計を買う事にして会計をお願いした。
「いや〜彼女さん愛されてますね〜。指輪もですけどやっぱり時計も特別な意味がありますからね〜。時を刻みますからね!」
「いや、本当にそういうのじゃ……」
「照れなくてもいいじゃないですか。仲が良くて羨ましいです。ずっとお幸せに」
結局店員さんは最後まで春香の事を彼女だと勘違いしたままだったが、これ以上この人に説明してもあまり意味は無いので諦めた。それに時計が時を刻むって当たり前の事だと思うけど、妙に強調していたのは何が意味があるのか? 少しだけ不思議に感じたが、大した事では無いだろうと思い俺は会計を済ませてラッピングしてくれた時計を受け取って帰る事にした。
店員さんのおかげもあって思っていたよりもずっといいプレゼントが買えた気がするので春香が喜んでくれるといいな。
家に帰ると、今日もカレーだったがいつものカレーとは少し味が違う。
「母さん、なんかいつもとカレーの味が違う気がするけどルーを変えたの?」
「そうよ〜。今日はこれを使ってみたんだけど、どうだった?」
そう言って母親が見せてくれたのは本格レトルトカレーのルーだった。
いつもと違うと思ったらレトルトカレーだったのか。
「なんでレトルト……」
「それが、急に春香ちゃんのママに誘われてお茶してたら、あっという間に時間が過ぎちゃって、作る時間がなかったからレトルトなのよ。美味しくないの?」
「いや、普通に美味しいけど」
いつもと違う感じだが、これはこれで非常に美味しい。
それよりも春香のママと時間を忘れるほど何を話していたのかという事の方がずっと気になったが、聞いても「いろいろよ〜」としか答えてもらえなかった。
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