第543話 ワイバーン戦

俺は魔力切れを起こしてしまったので、ふらふらしながら腹巻きから低級マジックポーションを取り出して、思い切って飲み干した。

やっぱり滅茶苦茶まずい……


「ううっ……シル『祈りの神撃』は当分の間使わないでおこうな。これを頻繁に使ったら俺がもたない」

「そうですか……わかりました。ご主人様のお身体が大事ですから」


シルが残念そうな表情を浮かべている。せっかく発現したスキルなので使っていければ良かったが、一回使う毎に魔力切れを起こして戦闘不能になるのであれば頻繁に使用する事は不可能だ。

やはりルシェの『暴食の美姫』と並んで特A級の危険スキルだと言える。

このスキルは、まず普段使う事は無い。完全なる死蔵スキルだが、残ったワイバーンを相手にベルリアとあいりさんがまだ戦っている。

ベルリアは『ヘルブレイド』を使用して、上空にホバリングしているワイバーンを撃ち落としてから、そのまま近接戦に突入しているが、本来のドラゴンよりは少し小さいとはいえ、かなりの大きさと迫力のワイバーンと一対一で近接戦闘を繰り広げているベルリアも流石だ。

ベルリアが二刀を使って、ワイバーンの爪と牙による攻撃を防ぎながら、徐々に手傷を負わせていっている。

炎と風を纏った魔剣はワイバーンの鱗と皮膚も問題にせず、みるみるうちにワイバーンが弱っていくのが見て取れる。明らかに以前の数打ちの剣に比べて武器の性能が上がっているのが目に見えてわかる。


「そろそろでしょう。これで終わりです『アクセルブースト』」


ベルリアがスキルを使い、炎の魔剣が加速してワイバーンの首を刈り取り、勝負は決した。

一方のあいりさんは俺が墜落に追いやったワイバーンと戦っているが、墜落した事でワイバーンは既に右半身にかなりのダメージを負っている様で動きが鈍い。


『アイアンボール』


あいりさんが近距離から容赦無く鉄球を叩き込む。


『サンダースピア』


鉄球が命中するのと同時に後方からミクの声がして雷の槍がワイバーンの胴体に突き刺さった。


「ギイィアアア!」


ワイバーンの悲痛な咆哮が周囲に響く。


「止めだ! 『斬鉄撃』」


あいりさんが弱ったワイバーンに向けて踏み込んで必殺の一撃を放ち勝負を決めた。

俺は、低級マジックポーションを飲んだ事でMPが回復して、動ける様になって来たので、ゆっくりと動き出し魔核を回収に向かうが、倒したワイバーンのうち魔核を回収出来たのは二個だけで、シルが倒したワイバーンからはなぜか魔核を回収する事が出来なかった。

やはりシルの新しいスキルは特殊なので死蔵だ。真なる神の一撃は人知を超えており、俺の限界をも突破している様だ。


「海斗、大丈夫か? シル様の新しいスキルは凄まじいな。あれならもしかして階層主でも一発で消せるんじゃ無いか?」

「相手にもよるとは思いますが、可能性はありますね、それと二人も流石です。初見のワイバーンも問題無く倒せましたね」

「さっきのは海斗の一撃で墜落してくれたのが大きかったし、ミクの魔法でほぼ勝負はついていたな」

「ああ、ミクの『サンダースピア』はワイバーンにも十分通用していたな」

「ええ、ほっとしてる。マジックジュエルを私に使わせてもらって感謝してるわ」


十六階層でのレベルアップにより確実に戦力アップしているのを実感出来るが、今回の戦闘で俺はほとんど役に立たなかった。

ワイバーンも探索者が憧れるモンスターの一つではあるが、今回全く楽しむどころでは無かったので次回は前に出てしっかりと戦いたいと思う。

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