第542話 ワイバーン

ドラゴネットが消えた後には普通に魔核が残されている。

当たり前といえば当たり前だが、ドラゴンといえども通常のモンスターと変わらない。

以前の龍よりもファンタジー感が増してテンションが上がるが、やはり悪魔の敵では無かった。

それにしても『炎撃の流星雨』はとんでもないスキルだった。

レベル5でキリが良いのでボーナススキルとかか?

となれば同じくレベル5でシルに発現した『祈りの神撃』もとんでもスキルの可能性が高い。

いざという時に本番ぶっつけで使うのはリスキーすぎるので、かなり勇気はいるが次の戦闘で一度使用しておいた方が安心だ。

最悪、低級マジックポーションがあるので、俺が我慢さえすればなんとかなると思う。


「シル次現れたモンスターに『祈りの神撃』を使ってみてもらっていいか?」

「はい、もちろん私は大丈夫ですが、ご主人様は大丈夫ですか?」

「…………」


これはやはりあれか? 俺が大丈夫じゃなくなるスキルっていう意味か?


「あっ、ご主人様奥にモンスターが三体います」

「そうか……じゃあシル頼んだぞ。ベルリアが一体、俺とあいりさんでもう一体をやりましょう」


進んでいくと現れたモンスターは、やはりドラゴン。ドラゴネットよりは少し大きいが、三体のうち二体は普通に空中を羽ばたいている。


「ミク、あれはなんのドラゴン? ドラゴネットじゃ無いな」

「あれは翼竜だけどサイズが小さいから多分ワイバーンね」

「ああ、あれがワイバーンか」


ワイバーンといえば竜の中では下位種のイメージがあるが実際に見るとかなり立派だ。

普通に、あれこそがみんなの知ってるドラゴンだといわれれば間違いなく信じるレベルだ。


「シルは地面にいるのを頼むな。俺達は飛んでいるのをやるから」

「はい、かしこまりました」


俺達が進んで行くとワイバーンもこちらを認識して襲いかかって来た。

俺は飛んでいる個体に向けて『ドラグナー』を放つと、銃が蒼白く発光し、放たれた銃弾は、蒼い糸を引いて一直線にワイバーンへと向かうがワイバーンか急旋回した為右翼に命中する事になったが、かなり大きな穴を開ける事に成功して、ワイバーンはそのままバランスを崩し墜落した。


「あれ?」


俺が思っていたよりも命中時の威力が高い気がする。

俺がレベルアップしたからか?

少し違和感を覚えたが今は戦いに集中する。


「我が主に仇なす者よ、神の怒りを知りなさい。無へ帰せ『祈りの神撃』」


すぐ横でシルの声が聞こえて来たので、見るとシルが神槍ラジュネイトを構えていつもと違う聖句を唱えている。

『祈りの神撃』の声が聞こえた瞬間、俺の身体がうっすらと赤く光り、俺から急激に何かが抜けて行く感じがした。


「ううっ……」


耐えきれなくなり、俺がその場に膝をついた瞬間シルの神槍が赤く発光して槍の周りの空間が歪んで見えた。

そのままシルが神槍をワイバーンに向けて突き立てた瞬間、完全にワイバーンか消えた。

なんだ今のは?

倒したという感じじゃ無かった。正しく一瞬で消えてしまった。

ダメージを与えるとか、突き殺したとかとは違い、一瞬にしてワイバーンの存在そのものを消し去ったような圧巻の現象が目の前で起こった。

これが真なる神の一撃。

やはりシルのスキルもとんでもスキルだった。

そして、俺は立っている事が出来ない。

目が回って気持ち悪い……

とてもこの状態では戦えない。

これは魔力切れ?

俺は急いで自分のステータスを確認するがMPの残量は1になっていた。

ルシェのスキル同様ほぼ一発でMPを50消費した事になるが、問題はそれが俺のMPほぼ全てを意味するという事だ。

このスキルをシルが発動するとその瞬間に俺は魔力切れを起こして戦闘不能になる。

なんてリスキーでピーキーなスキルなんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る