第537話 もしかして一階層の主?

腕の無くなった鬼の右側に回り込み、斬り込むが、腕を失い右側からの攻撃を防ぐ術を失った鬼はあっさりと消滅した。

あいりさんとベルリアの方を見るとまだ戦闘中だ。

ベルリアは女鬼を圧倒して、もう勝負はつきそうだが、ベルリアの刀はそれぞれ炎と風を纏っている。

剣を振るう度に効果が発動するようで、女鬼はまともに受ける事が出来ずに避け

る事に集中しているが、魔剣の二刀からは逃れる事が出来ずに徐々に手傷を増やし、足が止まるのも時間の問題に見える。

あいりさんは、袴鬼と間合いの差し合いをしているが、新しいスキルである『ダブル』を発動して薙刀を振るった。

その瞬間振り下ろされた薙刀がぶれて二刀になり、そのまま防ぎ損ねた鬼に斬りかかりダメージを与える事に成功した。

『ダブル』の手数が倍になるってこういう事か。

発動の瞬間、物理的に攻撃が倍になる。相手からすると突然攻撃が増えるので、対応が遅れる。

あいりさんがダメージを負った鬼の首を返す刀で刎ね勝負は決した。


「あいりさんの『ダブル』って凄いですね。攻撃が増えるってマジックみたいですよ」

「ああ、かなり使い勝手が良い。初見でこれを防ぐのは相当難度が高いと思う」

「海斗、次は私もやってみていい?」

「ああ『ライトニングスピア』だよな。次の敵に頼んだ」


俺は魔核を三つ集めて俺の取り分である一個を『ドラグナー』に吸収させる。

これでようやく『ドラグナー』を最低限使えるようになったが、次はバルザードの分を確保したい。

戦闘時に感覚のずれから少してこずる場面はあったが、鬼殺しとレベルアップの効果もあり、最終的にはあっさりと倒す事が出来た。


「ミク! その小鬼を頼んだぞ!」

「まかせて」


次に出てきたのは小鬼だったので一体をミクに任せる。


「それじゃあ、いくわよ『ライトニングスピア』」


ミクがスキルを発動した瞬間、閃光が走り、次の瞬間には着弾していた。小鬼が雷の槍をくらい地面に倒れているので、俺が走って向かいとどめをさした。

シルの雷撃のように一撃で消し去る程の威力はなさそうだが、雷だけあってそのスピードは光速。

光った瞬間には着弾していた。

スピットファイアと併用して使えば、以前よりも間違いなく火力アップしている。


「ミク、やったな」

「うん、やったよ。ついにモンスターを倒せる魔法が使えるようになったわ。今までサポートしか出来なくて、ボス部屋でも役に立てなかったけど、これで戦えるわ」


確実にみんな強くなっている。

シルとルシェの力を借りなくても十分に戦えている。

この日は一日十六階層の鬼を倒して回ったが、探索の順調さとは比例せず残念ながら魔核は殆ど貯まる事が無かった。

翌日になり再びダンジョン前で待ち合わせたが、カオリンはまだ風邪が治らないとの事で休んでいた。


「ミク、カオリンって風邪がひどいのかな」

「私もメッセージのやり取りだけだから詳しくは分からないのよね」

「みんなでお見舞いとか行ったほうがいいかな」

「一応私も昨日聞いてみたんだけど、そんな大した事無いから来なくていいって連絡があったのよね」

「そうか〜、まあ本人がそう言うなら大丈夫なんだろうけど、ちょっと心配だな」

「あいりさん、今日の探索どうしますか?」

「まあ来週になればカオリンも戻って来るだろうから、それまでは十六階層でいいんじゃないか?」

「あの……一階層は?」

「うん、ないな」

「多分レベル22で一階層を探索してるのは海斗だけだと思うわよ」

「いや、だって一番効率がいいんだって」


結局二対一の多数決でこの日も一日十六階層を探索し鬼を狩って回る事になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る