第533話 久々の学校

俺は朝一番に退院してから、すぐに学校へと向かった。

一時間目は無理だったが二時間目には間に合ったので久々に授業を受ける。

まだ学年が始まったばかりだったので、特に遅れを感じる事なく授業を受ける事が出来た。


「海斗! 心配したぞ。ダンジョンでやられたんだってな」

「いや、ちょっと違うけど誰から聞いたんだ?」

「それはもちろん葛城さんだけど」

「春香か……。まあ完全に間違いでは無いんだけど、モンスターにやられたんじゃなくて、無理しすぎて全身の筋肉が切れたんだ」

「全身の筋肉が切れたって、一体どれだけ無理したらそんな事になるんだ?」

「一応16階層の階層主を倒すために仕方がなくな」

「お〜っ! 遂に17階層か。さすがだな。羨ましいけど無理すんなよ。昨日まで全く動けなかったんだろ」

「まあ、治ったからそれはもういいんだって」

「海斗〜、水臭いな。俺に言ってくれれば花園さんも誘ってお見舞いぐらい行ったのに」

「いや、花園さんが来ても仕方がないだろ。病院を誘うダシにするな」

「だって、三年になってからなかなか誘う機会がないんだって」


ああ、久しぶりに学校だが、この二人といると日常生活が戻って来た感じがして結構楽しい。

4時間目まで真面目に授業を受けて昼休みにトイレに行ってから教室に戻ろうとしていた時だった


「先輩、ちょっといいですか」

「え? 俺の事?」

「はい、そうです」

「何か用?」


見た事のない女の子が声をかけて来た。

俺の事を先輩と呼んでいるので一年か二年生だと思うが全く知らない顔でショートカットの結構快活な感じの女の子だ。


「はい。先輩って『黒い彗星』ですよね」

「…………」

「聞こえてますか? 先輩って超絶リア充『黒い彗星』ですよね」


これって……

多分この子探索者なんだよな。

それで完全に俺の事をわかった上で声をかけて来てるって事だよな。


「……なんの事かな。俺にはちょっとよく分からないな」

「もしかして、隠してるんですか? 私ダンジョンで黒ずくめの先輩を何度か見た事あるんですけど」


やっぱりこの子探索者か……


「いやいや、俺の顔ってよくある顔だから、装備に身を包んだら誰だか分からないんじゃないかな」

「私、人の顔を一度見たら大体覚えてるんですよね。しかも黒ずくめのハーレムパーティなんか見た日には忘れるはずないじゃないですか」


これは完全にバレてるな。


「それで、もし俺が仮にそうだったとして何か用か?」

「いえ『黒い彗星』さんが同じ学校だと分かって、声をかけようと思ってたんですけど、何でかずっといませんでしたよね」

「俺、今日の朝まで入院してたから」

「もしかしてダンジョンで何かあったんですか?」

「いや、なにも無いよ。俺そろそろ教室に戻りたいんだけど」

「それじゃあ、連絡先教えてください」

「連絡先? なんで?」

「せっかく同じ学校なんですから『黒い彗星』さんに探索のアドバイスしてもらいたいなと思って」

「俺はそんなアドバイス出来るような探索者じゃ無いよ。自分のパーティの事で手一杯なんだ」

「やっぱり先輩が『黒い彗星』さんなんですね」

「あ……」

「まあ今日は諦めます。また、日を改めます」


そう言って女の子は風のように去って行った。

今のは一体なんだったんだ?

『黒い彗星』ネタを校内に拡散する気か?

そもそも何で俺と連絡交換?

最近の若い子は怖いな。それに俺が『黒い彗星』って完全にバレてたな。

やっぱり、目立つと良くないな。これからは特に気をつけて行動しないといけない。流石に何人も同じような人が現れるとは考えにくいが、プライベートで『黒い彗星』呼ばわりされたのは初めてだったので、かなりびっくりしてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る