第471話 対人戦スキル

苦戦したがなんとか女鬼を倒す事が出来た。

大鬼の方を見ると既に姿は無く消滅した様だ。

どうやらとどめはベルリアがさしたらしく、俺の方を得意顔で見ている。

やはり大鬼には『アースウェイブ』が効果的だった様なので、今後もこのパターンで仕留めるのが良さそうだ。

一方俺が今回相対した女鬼はスピードは速かったが、それ以外は突出した能力を持っていた訳では無い気がする。

どちらかと言うと能力的には大鬼やアラクネの方が上だった気がするがソロで臨んだせいか、かなり苦戦してしまった。

ナイトブリンガー越しとは言え直接攻撃もくらってしまった。

衝撃もかなりの物で今も脇腹には結構な痛みが残っているので確実に痣になっているだろう。

女鬼の小太刀をくらった痛みの残る箇所に目をやると


「あ〜っ!ちょっと凹んでる!おあっ」


なんと俺のナイトブリンガーが凹んでいた。そこまで大きな損傷では無いが攻撃を受けた部分が少し凹んでしまっている。

今までダンジョンに潜る度に綺麗に磨いてきた俺の大事なナイトブリンガが〜!

ナイトブリンガーが凹んだ………

形あるものには傷がつく。ダンジョンマーケットのおっさんが言っていた様に、それは物事の真理だとは思うがかなりショックだ。

文字通り俺の身代わりとなったのだから鎧としては本望だろうが非常にショックだ。

バルザードが欠けた時にもショックを受けたが、それと同じぐらいショックだ。


「まあ、海斗が無事だったんだからいいじゃない。ショックなのも分から無くはないけど、それはあくまでも防具じゃない」

「………ミク、分かってないな。ナイトブリンガーは大事な大事な防具なんだよ〜。ちょっとの傷でもこれを見逃してしまえば、次からはもっと大きな傷を受ける様になってしまう。人間は慣れてしまう生き物なんだ〜!」

「そうね。そうかもしれないわね。次から気をつけて」

「ああ、有り難う」


俺の防具への思い入れがミクにも少しは伝わっただろうか?

それにしても今回の原因は全て俺にある。

自分でも気付いてはいたが、俺は対人戦スキルが低い。

ダンジョンの敵も獣や虫型等の所謂モンスターに対してはそこそこ戦えていると思うが、人型に近い種類のモンスター、特に今回の様に技術を持って臨んで来る敵にすこぶる弱い。

人型に近ければ近い程戦闘技術の応酬戦になるが、剣術を含めそのあたりの技術スキルが圧倒的に劣っている。

ベルリアに鍛えてもらっているとは言え、本格的な相手とはまだまだ比較出来るレベルに無い。

この16階層がオーガの様な力押し主体の鬼では無く、今回の様な鬼中心に出現するのであれば確実に苦戦する。

ベルリアとあいりさんは能力と技術的に問題ない様な気がするが、俺には厳しい探索になりそうだ。


「またベルリアに修行してもらわないとな〜」


ここの所ダンジョン探索と春香と会う為に全ての時間を取られてしまいベルリアとの修行が全く進んでいなかった。


「マイロード、私はいつでもお待ちしています。スキルアップの為に更に厳しい修行をお約束します。お任せください」


ベルリア、言ってる事は間違っていないが、その言い回しでやる気が出る生徒は皆無だと思うぞ。

今気が付いたが、もしかしてベルリアって教えるのに向いてなかったりするのか?

教えてくれる人がいないのでベルリア一択だが、可能であれば他の人に習った方がスキルアップが早かったりするのだろうか。

いずれにしても16階層中に劇的なスキルアップをする事は不可能なので、長期的な計画で対人戦スキルを磨いていこうと思う。

千里の道も一歩からだ。千里はいくら何でも遠すぎるので百里あたりを目指して頑張りたいと思う。

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