第450話 ボス戦

金曜日となった今日遂に15階層の最奥までたどり着く事が出来た。

かなり短期間での到着となったが、やはりレイドバトルで1/3付近まで連れて行ってもらったのが大きかった。


「あの扉がそうだよな」

「まず間違いないと思う」

「よし、じゃあ危なくなったら即撤退!」

「海斗さん、最初から弱腰すぎませんか?」

「いや、ここまで来たら焦る必要もないから、危なかったら即逃げよう。ポーションもすぐ出せる場所に準備しとこう」

「まあ、慎重に越した事はないな」


眼前には隠し扉とほぼ同じ大きさの扉が出現しているので、俺は扉に手をかけ一気に押し開く。


「あれ……?」


隠し扉の時と同じ様に開かない。

これはあの時と同じ様に押す力が足りないのだろう。


「ベルリア手伝ってくれ。同時に押し込むぞ」

「マイロードお任せください」


今度はベルリアと2人で全力で押し込んでみたがびくともしない。


「だめだ……みんなも手伝ってもらえるかな」


今度はパーティメンバー全員で押し込んだが全く動かない。


「ふ〜っ。全然動かない。どうなってるんだ?このメンバーで動かないとなると何か開くのに条件があるのか?呪文が必要とかか?」

「そんな呪文のヒントとかなかったわよ」

「俺達のレベル不足か?」

「それは無いと思うのです。私達が15階層の平均以下とは思えないのです」

「そうだよな〜」


行き詰まってしまった。

どう押してもだめだ。遅てだめなら引いてみるか。


「よし全員で引いてみようか」

「でもこの扉引ける様な持ち手がないんだけど」


確かに扉には鍵穴も持ち手も何も無い。

持ち手のない状態でこの重そうな扉を引けるとは到底思えない。


「スライドドア……ではないのでしょうか?」

「スライド?」


前回がスライドドアでは無かったので頭の中から除外していたが、有り得るのか?


「それじゃあみんなで横にスライドしてみようか」


俺達は全員で扉に手をつけて一気に横方向へ力を入れてみた。

その瞬間あれほど力を込めても一切動かなかった扉が何の抵抗も無くス〜ッと横方向に動いて開いた。


「スライドだったのか……。これ造った人は性格が悪いな」

「多分造ったのは人ではないのでは」

「カオリン……例えだよ」

「そうなのですか」

「そうだよ」

「2人ともしっかりして。これからボス戦なのよ。緊張感が無さすぎるんじゃない?」


このやり取り俺は何も悪くないと思うが………

俺は気を取り直して開いた扉の中を覗くと、奥の椅子に敵が座っていた。

15階層のボスなのでドラゴンや大型のアラクネを想定していたのだが、椅子に座っているのは人型のモンスターだった。


「人間?」

「マイロード、人間ではありません。あれはモンスターです」


座っているので背の高さは分からないが、見る限り普通の人間に見える。

黒髪に白い肌で西洋風の出で立ちの男性がそこに座っていた。

俺達は警戒しながら部屋の中に入って行く。


「やあ、やあ、可愛い女の子達がやって来たね。ビューティフォ〜」

「は?」


座っている男が突然話しかけて来たが、普通に日本語だ。

しかも可愛い女の子?


「僕は運が良い。こんなに可愛い女の子達の血を吸えるなんてファンタスティック!」


ファンタスティック?

こいつ頭大丈夫なのか?


「さあ、こっちにおいでマドモワゼル。さあカモ〜ン」


………だめだこいつ。完全にダメな奴だ。


「海斗、こいつ焼いて良いか?気持ち悪い」

「まあ、そうだろうな。よし焼いていいぞ」

「死んであの世でその軽口を後悔しろ気持ち悪い『破滅の獄炎』」


座ったままの男に向かってルシェが『破滅の獄炎』を放ち、敵は一瞬で炎に包まれた。

なんて馬鹿な奴………

本当にこれがボスモンスターだったのか?

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