第421話 亀河童

「上手くいったな。思った以上に『アースウェイブ』が効いたみたいだ」

「やっぱり首は、他よりも柔らかいみたいだな」


このパターンが次も通用する様ならレッサー龍はもう問題無く倒せそうだ。

やはり、相性や戦術が重要だという事を再認識させられる。

消耗も殆どなかったので、探索を再開する。


「ご主人様、お見事でした」

「いや……俺は何もして無いけどな」

「いえ的確な指示と囮として十分に機能されていましたよ」

「ああ、ありがとう」


やっぱりシルは天使だ。いや女神だな。心のオアシスだ。


「シル、こいつを甘やかしちゃダメだぞ。はっきり言ってやれ。出足が鈍くて遅れを取っただけだろ。ブレスにびびっただけかもな。ベルリアでさえしっかり役目を果たしてたんだぞ」

「ぐっ………」


こいつはやっぱり悪魔だ。人の痛い所をえぐって来る。

俺は褒められて伸びるタイプなんだ。M属性は皆無なのでダメージしか感じない。

メンタルを立て直して奥に進んでいく。


「ご主人様、敵モンスターです。1体だけですのでレッサー龍かもしれません」

「よし、それじゃあさっきと同じで行ってみようか」


さっき戦ったばかりなのでタイミングも分かっている。次は確実に活躍しないと何を言われるか分かったものではないので、見つけたら速攻をかける。

俺たちは先程と同じようにベルリアとあいりさんと俺が前衛に立って進んで行くとすぐに敵モンスターを捉える事が出来た。


「あれって……龍じゃ無いな」

「亀?」

「河童?」

「怪獣?」


俺達の前に現れたのは亀のモンスターだと思う。

甲羅を背負っておりサイズも以前の階層で戦った亀型モンスターよりも一回りは大きい。

ただし亀なのに2本の足で立っており、巨大な河童のようにも見えなくは無いが顔は噛みつき亀のような感じで頭に皿は無さそうなので、やはり河童では無く亀なのだろう。


「えっと……」


龍を想定していたので一瞬戸惑ってしまったが、すぐに頭を切り替えて戦闘に入る。


「折角なんで、もうこのまま龍と同じ作戦で行きましょう」


どうせ初見のモンスターには、特別な対策を立てようも無いので、当初の予定通りに戦う事に決めて、亀型モンスターに向かって行く。


カオリンが『アースウェイブ』を発動させて2足の動きを封じ込めようとするが、龍と違い足に水掻きがあるせいか、ぬかるんだ足下の影響を受けずに普通に歩いている。


「カオリン『ファイアボルト』に変更しよう」


足止めして一斉に攻撃する予定だったが、この大型亀には難しいようなのでカオリンには攻撃魔法に変更してもらう。

スナッチが『かまいたち』を発動するが、甲羅と外皮に阻まれてダメージを与える事が出来ていない。

見た目通りの硬度を誇っているらしいので、レッサー龍同様に直接攻撃を叩き込む必要がありそうだ。

ベルリアが先陣をきって亀型モンスターに斬りかかるが、やはり腹の部分も硬いらしく、完全には刃が通っていない。

亀型なのでカメラは腕を振るってベルリアを攻撃して来るが爪の部分が凶器と化しており、くらったらただでは済みそうに無い。


「ベルリア、頭を狙え!」


俺とあいりさんがベルリアに代わってカメラを相手にする。

側から見るよりもかなりスピードと迫力があり、爪での攻撃が怖いので、距離を取りながら牽制する。

カメラの意識がこちらに集中したタイミングを狙ってベルリアがジャンプして回転斬りを敢行するが、ベルリアの刃がカメラの頭に振り下ろされた瞬間、頭が甲羅の中に引っ込んでしまった。

ベルリアの2刀はそのまま甲羅の縁にめり込んだが、硬い甲羅に阻まれて断ち切るには至らずにそのままの状態で止まってしまった。


あとがき

ヤングチャンピオンコミックス モブから始まる探索英雄譚1をよろしくお願いします。


先日からサポーター制度が始まりましたが、現在手探りでサポーターさんになってくれた方に向けて何かできないか考え中です。

来週中には報告させていただきます。

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