第337話 下級悪魔

俺は14階層に臨んだ初日に悪魔の脅威に晒される事になってしまった。

多くの探索者がいる中でどうして俺のパーティばかりイレギュラーな敵に襲われるのか納得がいかない。


「とにかく全力でやるしか無い。俺とベルリアとが前に立つ。あいりさんは様子を見ながら前に出てください。残りのメンバーは敵を見ながらフォローを頼んだ」


とにかくやるしか無い。

フォーメーションを整えて前に進んで行くが、何故か少し寒い。


「マイロード、敵です。3体とも間違いなく悪魔です」

「あれってなんの悪魔だ?」

「1番小さいのがインプ、そしてあのモヤの様なのがドリームイーター、最後がフロストデーモンです」

「あいつら強いのか?」

「下級デーモン達ですので以前の私程ではありませんが、今の私達にとっては間違いなく強いですね」

「そうか……。ベルリアどれをやる?」

「ドリームイーターは残念ながら相性が悪いのでフロストデーモンを任せてください」

「それじゃあ俺はインプだな。ドリームイーターはシルとルシェに任せよう」


目の前に現れた敵は下級悪魔らしいので士爵だったベルリアよりは弱いらしいが、3体もいるので油断は出来ない。

俺の相手のインプだが名前だけは聞いたことがある。姿はベルリア達と同じぐらいの大きさだが、目が赤く腹が出ていてとても強そうには見えないが、俺が知っている程のメジャーな悪魔なので下級と言えども強いはずだ。

俺は、歩いている最中に溜めたバルザードの斬撃を迷う事なく速攻で放った。

そして着弾と同時にナイトブリンガーの効果も発動する。

いつもと同じ動作だ。いける。そう思ってインプに近づこうと走り出すが、インプの方を見て唖然としてしまった。


「どんな硬さだよ」


なんと溜めたバルザードの一撃が生身の右腕により止められていた。しかも、腕を斬り落とすどころか、軽く切り傷ができた程度のダメージしか与える事が出来ていない。

これで大きなダメージを与えられないとすると、近距離から斬撃を放つか直接叩き込むしか無い。

平静を装い気配を消す事に集中して一気に距離を詰めるが、インプは手に持つショートソードで俺に向かって的確に攻撃を仕掛けてきた。

とっさにバルザードで受けるが、俺の腕に強烈な重みが加わる。

こいつ俺の事が完全に見えている。

ナイトブリンガーの効果が全く効いていない。

ナイトブリンガーの効果は今までの経験上レベルが高い敵程効果が薄い。

と言う事はこいつは完全に俺よりもレベルが上という事だろう。

ベルリアでさえ、この前の立ち会い時には若干俺の場所を掴み損ねていた。

つまりは今のベルリアよりも上か。

確かに『アサシン』の効果が発動しているにもかかわらず、剣速がそれほどゆっくりになったとは感じられなかった。

どう考えても膂力も俺より上なのでバルザードで押し返す事は諦めて斜めに逸らす。


「いやあ〜!」


俺のすぐ背後からあいりさんの気合いの声と共になぎなたの一撃が振り下ろされ、完全にインプを捉えたと思ったが、瞬間的にインプの体がぶれて避けられた。


「やあああ〜!」


あいりさんが更に俺の位置まで踏み込んで来て横薙ぎに刃を振るう。

今度は間合いを詰めたおかげで完全に捉えたが、俺の時同様腕で止められてしまった。

すかさず俺もバルザードで斬りかかるが、インプの短い足がカウンター気味に飛んで来て弾き飛ばされてしまった。


「ぐううぅ〜」


やはり強い。

俺が弾き飛ばされたのを見て、ミクがスピットファイアで時間を稼ごうとしてくれるが、インプは火球を煩わしそうに弾いで防いでしまった。

俺はすぐに起き上がり、再び気配を薄めて『アサシン』の効果を期待しつつインプに向かって走った。

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