第334話 13階層と約束
俺は今13階層に潜っているが、今週こそこの階層を突破しようと思う。
金曜日久しぶりに春香から映画のお誘いを受けたが、急だったので来週行く約束をした。
「海斗、よかったら週末に映画に行かない?『ラビリンスラプソディ』を見たいと思ってるんだけど」
「ごめん今週はダンジョンに潜るのが決まってるから来週でもいいかな」
「うん、もちろんだよ。その時にお買い物もいい?」
「何か欲しいものがあるの?」
「そろそろ春っぽい服も買いたいなと思って」
「そう、いいんじゃ無いかな」
メンバーには事情を話して来週の土曜日に休みをもらう事を了承してもらった。
「海斗さんって、毎日ダンジョンに潜ってそうですけど普段からデートってちゃんとしてるんですか?」
「いや、そもそもデートじゃ無いけど、たまに」
「たまにってどのぐらいですか?」
「2〜3週間に1回ぐらいかな」
「え〜海斗さん高校生ですよ。しかも同じ高校で家も近いんですよね」
「まあそうだけど」
「ありえませんよ。普通毎日デートじゃ無いですか?」
「いやだからデートじゃ無いから毎日じゃ無いんだよ」
「海斗さんやばいですよ」
「海斗がやばいのは前からよ。きっと今のままじゃ彼女に振られるわね」
「いやだから彼女じゃ無いし、ふられてもないんだって」
「海斗は己を見つめ直した方がいいと思うぞ。もっと土日休んでもいいんだぞ」
「いえ大丈夫です」
なぜか3人に責められるような形になってしまったが、春香とは学校で毎日会っているので、毎日デートと言われても流石に毎日カフェに行くわけにもいかないし無理だと思う。
出来れば週に1回ぐらい誘ってみたいがそんなに毎週口実を思いつかない。
「ご主人様、敵ですよ。しっかりしてくださいね」
「鼻の下伸ばして春香のことばっかり考えてるんじゃ無いぞ!」
「なっ!何を」
「お前の鼻の下に全部書いてあるんだよ」
毎回、何でこの2人は俺の心が読めるんだ?しかも聞いても教えてくれないがなぜ春香の名前を知ってるんだ?
俺は動揺する気持ちを立て直してモンスターに立ち向かう。
気持ちとは裏腹に身体はしっかりと慣れてきた対トレント戦を順調にこなして撃退したので先を急ぐ。
トレントのエリアを抜けて、先週俺が穴に落ちた位置まで到達する事が出来たが、既に穴は無くなっていた。
ダンジョンの不思議な所だが、全部が全部では無いがダンジョンの損傷した部分については大体自動修復してしまうようだ。
隠しダンジョンの扉などはシルが壊したままになっているので物によるようだ。
「よし、ここからはみんな落とし穴と鳥型にも注意していこう」
落とし穴に注意しながら進もうとは言ったものの、突然地面が無くなってしまうのだから注意のしようが無かった。
サーバントの3人と1匹そしてあいりさんだけはなぜか華麗に避けることが出来たが、俺を含む残りの3人には避ける事は出来なかった。
初め俺は飛んだり跳ねたりしながらどうにか避けようと試みたが、カオリンが落ちて事態は急変した。
「きゃっ!」
後方で声が上がったので慌てて振り向くと、カオリンがいなくなっていた。
「大丈夫か!」
「はい、大丈夫なのです。『ファイアボルト』」
カオリンは穴に落ちたものの、後方からゆっくり歩いて来ていただけなので落ちても特別ダメージを受ける事なく冷静に根を倒してから上がって来た。
俺は全力で走って穴に落ちた結果窮地に陥ってしまったが、止まった状態、もしくはゆっくりと歩いた状態で落ちたとしても、穴に落ちてビックリする程度で冷静に対処すればなんて事は無かった。
俺のスピードを逆手に取り、冷静さを奪う恐るべき攻撃ではあったが、対応策が割れてしまえばなんて事は無かった。これからも穴に落ちても冷静に対応していきたい。
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