第293話 トレント?

俺は今13階層にいる。

この階層は初探索なので深追いせずにそろそろ帰ろうと思う。


「みんな今日はそろそろ引き上げようか」


パーティメンバーに声をかけてから、全員で来た道を引き返すことにする。

この階層には普通に植物が生えており、草だけではなく木も生えている。

シルがいるので大丈夫だとは思うが、パッと見はトレントと見分けがつかない木も結構ある。

木があるって事は昆虫とかもいるのかなと考えながら12階層への階段までの道を歩いているとシルが


「ご主人様、敵モンスターです。恐らく2体だと思うのですが、気配が薄いです」

「気配が薄いってどう言う意味だ?」

「間違いなくモンスターは居ますが、存在というか気配が薄いんです」


いまいちシルの言っている意味が分からないが、とにか敵襲に備えないといけない。


「みんな、モンスターはよくわからないけどベルリアとあいりさんが前衛に、俺はその後ろにつきます。ミクとスナッチ、カオリンは後衛で、もしトレントだったらカオリンとルシェは魔法を頼む」


陣形を整え敵モンスターを待ってみるがやはり何も現れない。

先程の戦闘と同じ展開なので今回の敵もトレントの様な気がする。


「来ないからゆっくり進んでみようか」


陣形を崩さず歩調を合わせて前方に進んで行くが、それらしいモンスターが見当たらない。


「シル、見当たらないんだけど、間違いかな」

「いえ、もう近くに居るのは間違いありません」


どこだ?土の中か?

警戒してみるが反応は無い。


「みんな、モンスターを確認できてる?」

「………」


返事が無い。誰も認識出来ていない様だ。

やはりシルの勘違いかと思った瞬間、突然あいりさんがうずくまってそのまま地面に倒れ込んだ。

敵襲か!?


「あいりさん大丈夫ですか!どこをやられたんですか?」

「………」


あいりさんからの返事が無いので顔を伺うと意識がないようだ。


「ベルリア、あいりさんを頼む。シル『鉄壁の乙女』だ!」


何だ?何の攻撃だ?風系の攻撃か?あいりさんは一体何の攻撃を食らったんだ?


「ダークキュア」


ベルリアがあいりさんに治癒魔法をかけると、あいりさんはすぐに意識を取り戻した。


「あいりさん、大丈夫ですか?どんな攻撃を受けたか覚えてますか?」

「わたしは……」

「あいりさん、意識無くなってたんですよ」

「そうか……何をされたのかわからない。意識を失う程強力な攻撃を受けた記憶は無いが」


攻撃で意識を失ったのでなければ何だ?今までには無かった攻撃パターンだ。


「マイロード、あいり様には外傷はない様でしたので、恐らく精神系の攻撃ではないでしょうか?」

「精神系ってどんなのだ?」

「例えばルシェ姫の『侵食の息吹』とかですね」

「えっ!あいりさん溶けちゃうのか?」

「………嘘でしょ」

「いえ、あれは精神系でも特殊ですから、眠りや混乱、気絶などです」


ベルリアの話通りだとするとあいりさんがくらったのは眠りか気絶だろう。

しかも本人が気づかないうちに効果を発生させているのだから相当にやばい。


「ベルリア、防ぐ方法はあるのか?」

「シル姫の『鉄壁の乙女』であれば効果を防げる可能性は高いと思われます。あとは意識して耐えるしかありません」


それにしても直接的な攻撃と違っていつ何処から仕掛けられたのかが全くわからない。

精神系の攻撃がこんなに厄介だとは思わなかった。身構えるだけでプレッシャーがかかる。

しかし、敵が近くにいてこちらを認識していることだけは間違いない。


「ミク、スナッチにヘッジホッグを発動させてくれ。どこに居るかわからないから全方向に攻撃するしかない」


俺の要請に応えてスナッチが『ヘッジホッグ』を発動させて周辺を鉄の針が襲ったが、残念ながら反応が無い。

一体敵はどこから攻撃しているんだ?


あとがき

HJ文庫モブから始まる探索英雄譚1〜2をよろしくお願いします。

ニコニコ静画でモブからコミカライズ1話が無料掲載中です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る