第262話 ダンジョンキャンプ

俺は今ダンジョンの下層を移動している。

オーガを撃退して上階への階段を目指して進んでいるが、なかなか距離が詰まらない。

モンスターを感知する度に迂回しているので、進んでは退がるを繰り返している感じだ。

オーガの一団を倒した感じだと、このレベルで有れば無理を通せば、進めなくはないが、真司と隼人の事を考えるとリスクは避けたいし、数をこなして消耗戦になると厳しい。

総合的に判断して、やはり今の方針が最善手だと思い進んでいるが、みんな分かっているからか誰からも文句の声は上がっていない。


「みんな、相談なんだけど。スマホを確認したら今は18時だけど、まだ半分ぐらいしか進めてないんだ。無理して進めばもしかしたら深夜に上階に着けるかもしれないけど、俺は後数時間したら今日は休息を取った方がいいと思う」


「休息って、ダンジョンの中でか?」


「そう。今はまだ大丈夫だけど、このまま進み続けたら疲労で集中力が下がるし、危ないと思う。もしかしたらシルの感知も鈍るかもしれない」


「ご主人様、私は大丈夫ですよ」


「でも、夜中迄の長時間やった事はないだろ」


「はい」


「だから隼人と真司には悪いんだけど、後2時間ぐらい進んだら、ダンジョンで野宿したいんだ」


「海斗、正直ダンジョンで野宿する発想がなかった。正直どうにか早く進まなきゃと思って焦ってたんだ」


「ああ、俺も一緒で結構疲れて来てたんだ。海斗、お前すごいな。ダンジョンで野宿か〜。いいんじゃないか」


「よし、じゃあもうちょっと頑張るか!」


その後、モンスターと交戦することなく20時を迎えたので探索を打ち切る。

野宿に適当な場所が良く分かっていないが咄嗟に逃げられる様にオープンスペースに陣取ることにした。

見通しが良く逃れる代わりに4方から攻められる可能性もあるが、何処に決めても一長一短あるので、ここで野宿を始める。


「それじゃあ、シル今は周囲にモンスターはいないよな」


「はい。大丈夫です」


「シルには、夜中にまたお願いするから一旦送還するな」


「かしこまりました。いつでもお喚びください」


「それじゃあ、ベルリアに周囲の警戒を頼むよ」


「かしこまりました。お任せください」


「ルシェは・・・とりあえず一旦戻るか」


「なんか引っかかるけど、わかった」


「ベルリアは24時までな」


「はい」


「それじゃあ、シルとルシェは、また後でな」


そう言って2人をカードに送還した。


「じゃあ、俺達は晩飯にするか」


「晩飯って言っても、俺飴ぐらいしか持ってないぞ」


「大丈夫だ。俺がカップラーメン持って来てる。まあ1個しかないけどな」


そう言って俺はカップラーメンを取り出した。


「おお〜。海斗、さすがだな。だけどお湯はどうするんだ?」


「いやこのまま食べるんだよ」


「えっ?そのままで大丈夫なのか?」


「ああ、前に動画で見つけて俺も実食済みだ。毎日は厳しいけど1回ぐらいなら全然いけるぞ」


「そうなのか。海斗って思ったよりアウトドアというかワイルドだな」


「本当にアウトドアだったら、ボンベとか鍋とか持ち込んで調理してるだろ」


「まあ確かに」


「分けたらあんまり無いけど、無いよりましだろ。明日はお菓子で凌ぐぞ」


そう言って手で麺を3等分に割って2人に渡した。


「んんっ!これ結構いけるな」


「ああ、お菓子みたいなもんだな。俺もこれから常備しようかな」


「まあ口に合ってよかったよ。喉は少し乾くけど明日の事もあるから水分は控えめにしてくれよ」


カップ麺をそのまま食べただけなので食事は1〜2分で終了してしまった。

トランプもホテルに置いて来てしまったので特にやる事も無いが寝るには少し早すぎる。

これからどうしようかなと思いながら、流石に鎧を着用したまま横になるのは無理なので、鎧を脱いでからマントを下に敷いてリュックを枕に転がった。


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