第244話 スピードスター

俺は遠征先のダンジョンを進んでいる。

目指すは8階層と区分されているエリアだ。

原始的だが一番間違いのない方位磁石を使いマップ通り進んでいく。


「ご主人様、敵です。今度もかなりのスピードで移動しています。4体います」


「みんな、さっきと同じでいくぞ。真司と隼人は焦らず行こう」


俺と真司とベルリアで前に陣取る。

今度も二角馬か?

そう思いながら前方を見ていると、現れたのはゴブリン?

いつも見ているゴブリンよりも一回り小さい気がするものの見た目は完全にゴブリンだが移動スピードがおかしい。


「はやっ」


まだ距離があるので姿を捉えられているが、明らかに通常のゴブリンとは違うスピードで移動している。


「隼人も魔核銃で応戦してくれ」


近づかれると厄介なので近づかれる前に仕留めたい。

俺も魔核銃を手に持ち攻撃をかける。


「嘘だろ!?」


魔核銃の攻撃が当たらない。弾が着弾する前に次の場所に移動してしまっている。

これはただのゴブリンではない。ゴブリンの素早い版。スピードスターゴブリンとでも言うべき存在だ。

正直狭いダンジョンではこいつらの特性は生かされないと思うが、この広い平面ダンジョンでは縦横無尽に駆け巡ることができる。

モンスターもダンジョンの特性に合わせて独自進化しているのかもしれない。

まだ、それほどこのダンジョンのモンスターに出会ったわけではないがスピード系のモンスターが多いことは想像できる。

このダンジョンをベースにしている探索者もそれに適応する形でレベルアップしているのだろう。

やはりダンジョンは奥深い。


「おぃっ、何ぼーっとしてるんだよ。さっさと指示しろよ」


「ああ、すまない。ルシェ、進行方向を予測して周辺一帯焼き払ってくれ。シルも雷撃を頼む。いくら速くても雷撃以上ってことはありえない」


「かしこまりました。ゴブリン如き素早くなっても所詮相手ではありません。『神の雷撃』」


「チョロチョロするな。『破滅の獄炎』」


「俺もやるぜ『必中投撃』おりゃ」


シル達の攻撃で2体のゴブリンが消炭と化し、もう一体も隼人の『必中投撃』による槍の一撃で消失してしまった。

シル達の攻撃の威力は言わずもがなだが、隼人の『必中投撃』はある意味スピード殺しとでも言う物だろう。

スピードが速かろうが必中するのだから、相手からするとたまったものではない。

俺も一応スピードタイプのつもりなので負けられない。

残った1体に向けて俺も走り出す。

残念ながらスピードスターゴブリンほどのスピードは出ないが動きを予測して距離を詰めることは出来ている。

攻撃が届く距離まで全力で走りながら理力の手袋の力を使い、ゴブリンの足を掴んでやった。

凄いスピードで走っていたゴブリンは、そのスピード分だけ思いっきり転んでゴロゴロと転がっていった。

転がって動けなくなったゴブリンに向かって一気に距離を詰めてバルザードでとどめを刺した。


「今度の敵も素早かったな。このスピードに徐々に慣れていこう。それにしても隼人の『必中投撃』は凄いな。スピードを無効化してる様なもんだな」


「そう言ってもらえると嬉しいよ。さっきは、全く動けなかったからな。なんとか今回は役に立たないとと思って必死だったんだ。海斗も戦い慣れしてて、さすがだな」


「まあ、ちょっとだけ俺の方が先輩だからな。いろんな敵にあってるからだよ。それに先週までとにかく小さい敵ばっかり相手にしてたからな〜。今回は普通サイズの敵ばっかりだからほっとしたと言うかやりやすいんだ」


「また、俺だけ役に立てなかった。俺やばいかも」


「まあ真司はパワータイプだから引き付けて戦うしかないな。武器もここでは槌じゃなくて2刀流で素早い動きに対応した方がいいんじゃないか」


「ああ、そうしてみるよ」


「マイロード、次こそ頑張ります」


そういえばベルリアこのダンジョンに入ってから全く役に立ってなかったな。


あとがき

モブから始まる探索英雄譚2の作製に取り掛かっています。はやくもあと1ヶ月後には予約開始です!

1巻をまだの方は是非、新刊コーナーで購入お願いします!

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