第239話 カフェデビュー
俺は今、洒落たカフェに来ている。
緊張しながら開けたカフェの扉の中は、思った通り洒落ていた。
そして、他にも結構お客さんが来ていたが、女の子のグループとカップルしかいない。
明らかに俺は場違い感があるが、今日は春香と一緒なので問題ないはずだ。
空いている席に案内されてメニューを見る。
これはドリンクだけでも良いのか?それとも約束事でデザートも注文する事になっているのだろうか。
「春香、注文するのって決まってる?」
「うん、オレンジティーとフランボワーズのタルトがオススメだって聞いたから、それにしようと思うの」
オレンジティーとフランボワーズのタルト・・・
やはり今までの俺の人生には関わりが無かった物たちだ。
オレンジティーはわかる。レモンティーのオレンジ版だろう。
フランボワーズがフランス語なのもわかる。聞いたことがある気もするが、さくらんぼだったか?
流石カフェ、メニューまでフランス語とは凄いな。
メニューを見る限り俺に馴染みがあるのは、フルーツのショートケーキだな。しかしこれは英語表記な気がするけど、誰も突っ込む人はいないんだろうな。
飲み物もコーラとかの方が本当は良いんだけど、カフェだしな。
カフェと言うぐらいだからコーヒーを注文するべきなんだろうな。
「それじゃあ俺はこのオススメのブレンドコーヒーと春香と同じフランボワーズで」
普段家ではコーヒーなど全く飲まないが、背伸びをして頼んでしまった。
まあコーヒーだから飲めない事はないだろう。
注文してからもう一度周囲を窺ってみるが、やはり女性比率が高い。
時間のせいもあるのだろうが、学生が多いし、制服から同じ高校の生徒も数組いるのがわかる。
放課後にカフェを普段使いするなんて、なんてお洒落な人達なんだろう。
カップルの席に目をやると、なんとケーキをお互いにフォークで食べさせあっている・・・
これは現実か?テレビの中に世界では無く現実世界なのか?こんな事が放課後の日常繰り広げられているのか?
あまりの衝撃に、凝視してしまっていると
「海斗、あんまり見ちゃダメだよ。相手にも悪いからね」
おおっ、やばい。
「ああっ。ごめんごめん。ちょっと衝撃的だったから」
「でも恋人どうしだったら、憧れるよね。あんな感じなのも」
「まあ、そうかもしれないね」
春香はあんな感じに憧れてるのか。俺は憧れると言うか、ああいうのは、お話のそれこそファンタジーの世界の出来事だと思っていたので全く頭の中に無かった。
確かに春香と「あ〜ん」とか言いながらケーキを食べさせ合いっこするなんて想像をしただけで、俺はもうやばい・・・
のぼせて鼻血が出そうだ。
最高すぎる。
あまりにスィートな妄想に正気を奪われそうになっていると本物のスィーツとドリンクが出てきた。
見た感じコーヒーは普通だ。フランボワーズのタルトは、赤いが、どうもさくらんぼではない気がする。
なんか種のようなブツブツが見えるので、イチゴか?普通の苺ではない気がするので木苺か?
フランボワーズは木苺の事か!知ったかぶりして
「ああ、さくらんぼのタルトか!いいね」
などと調子に乗らなくて良かった。
「私の希望でここに決めちゃったけど、海斗って甘い物大丈夫だったかな?」
「ああ、俺はなんでも大丈夫だよ。甘くても辛くても。春香の行きたい所だったらどこでもいいです。ここも最高です」
「うん。クラスの女の子にもここはすごく評判がいいみたい。私は初めて来るんだけど、折角だからタルトも早く食べてみよっか」
春香に勧められて、フォークでタルトを切って一口食べてみる
甘い・・・
俺は比較的甘い物もいける口だと思うが、かなり甘い。
甘いのをごまかそうとコーヒーに口をつけたが、今度は苦い・・・
「海斗、評判だけあってすごく美味しいね」
「あ、ああ。美味しいね。すごく美味しい。甘いのが美味しいね」
もしかしたら女の子には丁度いいのかもしれない。
春香が美味しそうに食べているのを見ているだけで俺は幸せだ。
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