第229話 砂の中のドリル


俺は今は12階層で戦っている。

砂の中の見えない敵と交戦しているが、殆ど手詰まりの状態なので俺自身を囮にしてシルの神槍の一撃に頼る事にした。


「ベルリア頼んだぞ。お前の勘が頼りなんだ」


「お任せください。マイロード、必ず期待に応えて見せます」


「ああ、頼んだぞ」


自分で考えた作戦とはいえ、自分自身を囮にするのはかなり緊張する。

数秒後にベルリアから声がかかる


「マイロード、来ました。避けてください」


声に従って大きく横に飛び退くのと同時にシルに声をかける。


「今だシル。頼んだ〜!」


「はい。我が敵を穿て神槍ラジュネイト!」


シルの攻撃により、今まで俺が居た足下の砂地が大きく穿たれ、吹き飛んだ。

シルの攻撃の跡を見ていると吹き飛んだ砂に混じって、小動物のような物が飛んで行って消滅してしまった。

はっきりとは見えなかったがあれってもぐらか?


「みんな、敵を確認出来た?」


「多分もぐらじゃない?」


「もぐらだと思うのですが、口の部分にドリルっぽい物が」


「私も見えたぞ。ドリルがついてた」


どうやら敵はもぐらで間違いないようだが、口がドリルになっているらしい。

敵なので微妙なところだが、ドリルもぐら。何となくカッコいいな。

モンスターって言うよりメカで出て来そうな感じと能力なので何となく俺の厨二心が反応してしまいそうになる。


「マイロード、来ましたよ。今です」


ドリルもぐらに想いを馳せている間にも敵が襲って来たようで、ベルリアの声に反応してジャンプする。 


「シル。頼んだぞ!」


「我が主人の敵を穿て神槍ラジュネイト!」


再び足下がシルの攻撃により大きく穿たれて弾け飛んだ。

今度も弾け飛ぶ土の中にドリルもぐらを確認する事が出来たが、やっぱり、なんとなくだが散りざまもカッコいいような気がする。

それと、さっきのシルの神槍の発動用の聖句だがなんかおかしかった気がする。聴き間違えだろうか?一瞬の事だったのではっきりとはしないが違和感を覚えた。

後2回あるので集中して聞き漏らさないようにしないといけない。


「マイロード、今です。跳んで下さい」


流石に3回目になると少し慣れて来た。さっきよりも余裕を持ってジャンプする。


「シル、もう一回頼んだ〜」


「はい。我が主人の敵を穿て神槍ラジュネイト!」


「ドバガガーン!」


三度、足下が炸裂してドリルもぐらが散っていく。やっぱり悪役然としていてかっこいい気がする。

それにしてもシルの聖句だがいつも以上に力が入っている上にやっぱり文言がいつもと違う。

しかも気のせいかラジュネイトの威力が幾分か上がっている気がする。


「マイロード、最後の一体が来ましたよ。今です。はいっ」


ベルリアも4回目で慣れて来たのか、掛け声が可笑しい。

可笑しいが俺も慣れたものでそれに合わせて体が自然と動いてジャンプした。


「シル、これで最後だ。頼んだぞ!」


「我が主人の敵を穿てそして消え去れ!!神槍ラジュネイト!」


おおっ。やはりいつもと聖句が違う。しかも力が入っている。おまけに威力も明らかに増している。


「ドバガガーン!!」


威力がありすぎたのか今度はドリルもぐらは姿を見せる事なく消滅してしまった。

それにしても見事に4体共俺の所を狙って来たな。

俺から変なフェロモンでも出ているのだろうか?それとも末吉の呪いか?モンスターに聞く訳にもいかないので真相は謎だ。


「シル。よくやってくれた。ありがとう」


「いえ。お役に立てて嬉しいです。それにしてもご主人様ばかり狙う不届きなモンスターでしたね。流石に頭にきてしまいました」


「そういえば、神槍の聖句がいつもと違ったようだけど」


「聖句はあくまでも発動のきっかけですから、ご主人様への攻撃が許せなくて、いつもより力が入ってしまいました」


「俺のために怒ってくれたんだな。嬉しいよ。これからも頼りにしてるからな」


「ありがとうございます。これからも頑張りますね」


シルと会話をしているとベルリアが得意そうな顔でアピールして来ているのが見えたので


「ベルリアも助かったよ。ありがとうな」


「マイロードのお役に立てて幸せです。これからも一層励ませて頂きます」


「頼んだぞ」


それはそうとドリルもぐら、敵ながらカッコ良かったな。


「あのさ、さっきのもぐらだけど、ちょっと格好良くなかった?」


「えっ?どこが?」


「いやフォルムとか」


「海斗さん変ですよ」


「いや散りざまとか」


「海斗、それはないと思うぞ」


う〜ん女性陣にはあの格好良さが分からないらしい。

パーティメンバーで普段から分かり合っていても、この感覚まで共有する事は難しいらしい。

本当は誰かと共有して盛り上がりたい所だが仕方がないのでこの感情は胸にしまっておこう。


あとがき

ついにモブから始まる探索英雄譚1が本日発売です。電子版配信は既にスタートしているところも!

今日から1週間の売り上げで次の出版が決まると他の作家さんが書いていたので是非HJ文庫の売り場を見つけて買ってください。今日買ってくれるとスキップするぐらい嬉しいです。今週買ってくれても飛び上がるぐらい嬉しいです。よろしくお願いします。

8/24連載開始の漫画版ですが、担当していただける漫画家さんはてりてりお先生です。以前アニメ、映画化されたリトルウィッチアカデミアのコミカライズを担当されていた方です。他にも、ももいろアーメット等を描かれています。秋田書店さんにお願いした大きな理由の1つがてりお先生です。とにかくずば抜けて上手いです。

第1話もかなり面白いのでモブからの読者には是非読んでもらいたいです。

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