第99話 お揃い
俺は今、8階層の中程まで進んでいる。
ドローンを失った悲しみに耐え、パーティメンバーと一緒に探索を進めている。
「キュー、キュー、キュー、キュー」
「みんな、気をつけて。魚群かもしれない。横に並んでタイミングを合わせて迎え撃つから。」
4人と1匹で水面を凝視していると、水面が爆発して大型マグロの大群が突進してきた。
前回不覚を取った相手なのでもう二度と失敗はしない。バレットの貯蔵も十分だ。
一斉に照射を始める。
「「プシュ」」「「プシュ」」 「「プシュ」」
あれ?なんかいつもと違う。順調にマグロを撃退できているのだが、何故か魔核銃の発射音が、多重で聞こえる。壊れたのか?
「「プシュ」」
いやそんな感じじゃない。不思議に思って周りを見ると、なんとミクの手の中に魔核銃が握られているではないか。しかも、普通に発砲して命中している。どうなっているんだ?
正直今すぐ聞いてみたかったが、マグロと交戦中なので我慢して戦闘に集中する。
ミクが、戦闘に加わっていることで、スナッチを合わせて常時4発の攻撃が放たれている。まさに弾幕状態を保てており、前回あれほど苦戦していたのに、思いの外スムーズに撃退出来ている。攻撃の手数が増えた事により、切れ目がなくなり、撃退するペースも上がっている。
「「プシュ」」「「プシュ」」
最後の発砲が終了して、マグロ型を全滅させる事に成功した。
「ミク、その魔核銃どうしたんだ?」
「ちょっとびっくりさせようと思ったんだけど、この前の戦闘で、ボウガンを撃ち尽くしたら、何もする事がなかったから、いろいろ考えて海斗の使っているこの魔核銃だったら私でも使えると思って、ダンジョンマートでパパに買ってもらったのよ。」
「パパ・・・。もしかしておっさんのところで買ったのってミクだったのか。」
「ああ。お店の人ね?結構優しいおじさんで、いっぱいサービスしてくれたよ。値段もあんまり売れないからって安くしてくれたし。」
「あのー。ちなみにその魔核銃はいくらぐらいしたんでしょうか?」
「確か130万円だったと思うけど。」
「130万円!?俺200万で買ったんだけど。」
「う〜ん。もしかしたら海斗専用価格だったのかも。」
「あの、クソ親父。またぼったくりやがった。ふざけやがって。前もやりやがったし。」
「もしかしたら、海斗ってふっかけられても気づかなそうだから、それでかもね。」
なんだその理由は?やはり、あのおっさんの値つけは全く信用ならない。なんとか2丁目を値切らないと気が済まない。
「ミク、魔核銃の使い心地はどうだ?私も父に頼んで買ってもらおうかな」
「軽いし、簡単に当たるんでオススメですよ。あいりさんもお揃いにしましょうよ。」
お揃いって。結構高額だと思うんだけど。
「ああ、お揃いもいいな。来週父に頼んでみるよ。」
「えーっ。みんなお揃いにするのですか?じゃあ私もパパに頼んで買ってもらうのです。仲間ハズレは嫌です。」
ええ・・・カオリンまで?魔法使えるんだから、いらないだろ。4人で同じ武器って、俺の存在意義が薄れていく。早く2丁目を購入するかスペシャルチューンを施さないと、いらない人になってしまう。
前回、死にそうな思いでなんとか倒せた大型マグロの群れを、ノーダメージで撃退することができたので、確実にレベルアップしたことを実感できて嬉しいし、魔核銃による戦力アップも本当に嬉しいのだが複雑だ。
多分俺の人間としての器の小ささが、この感情の根源にあるのだろう。今後はダンジョン探索と共に人間力を磨かなくてはならない。ただすぐにそんなビッグな人間にはなれそうにない。
俺もパパがほしい。
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