第98話 悲劇再び

俺は今猛烈に怒っている。

再びK-12のメンバーで8階層の探索を始めたが、昨日の出来事の後なので俺は正直不安で一杯だった。

少しでも、リスクを減らすために2台目のドローン型魚群探知機を購入した。

スナッチの探知では残念ながら敵の数迄はわからないからだ。

しばらく奥に進むと、水辺に出たので


「みんな、ドローンを飛ばすから下がってくれ。」


ドローンを飛ばして水際のちょっと奥に着水させる。直ぐに携帯モニターを確認すると、赤っぽい塊が2つ表示されている。流石は199800円だけあって高性能だ。


「みんなモンスターが2体いるみたいだから注意して。」


そう伝えてからモンスターの出現を待ち構えるが、なかなか現れないのでもう一度画面を確認するが間違いなく2体のモンスターが表示されている。

それからしばらく待っていると、急にドローンが消えた。


「え?」


先ほどまで水面に浮いていたはずのドローンが消えてしまった。マジックか何かの瞬間移動のように消えてしまった。

目視できる範囲を探してみるが何処にもない。

これは、まさか・・・・

考えたくはない、考えたくはないが、それしか考えられない。

それからしばらくして、突然ドローンだった物が水面を越え、空中に出現したが、ドローンは吸盤だらけの足に絡め取られている。

この吸盤だらけの足には見覚えがある。これはタコだと思うがそんなことはどうでも良い。

ふざけるな。買ったばっかりのドローン2号が完全に破壊されている。

許せない。1号の時も処女飛行で帰らぬ人になってしまったが、2号までもが同じ目に遭ってしまった。

お前ら、何かドローンに恨みでもあるのか?俺に個人的な恨みでもあるのか?

絶対に許せない。いや許さない。タコ刺し、いやたこ焼きにしてやる。

俺の怒りが頂点に達した時、奴らは姿を現した。

巨大なタコのモンスターが2体。

ワニもタコもまとめて俺の敵だ。生涯の敵認定だ。

大きいタコを見ると、クラーケンの親戚かと思う容貌だが、問答無用で魔核銃を連射する。


「プシュ」「プシュ」「プシュ」「プシュ」


タコを蜂の巣にしてやる。弾切れしたが、マガジンを交換して更に十発撃ち込んだ。

途中痛いのかなんなのか、わからないがうねうねしていたが、そんな事は知ったことではない。

二十発撃ったところで、ドローンを壊した方のタコが消失した。

消失したが、同じ風体をしたもう1体を消し去らなければこの怒りは収まらない。

簡単には消してやらない。


「ウォーターボール」


魔氷剣を顕現させタコめがけて駆け出す。


「うぉおー!お前らの所為で俺の199800円が。いや2台分の399600円が。返せ。今すぐ返せ。」


グニグニしている足で攻撃してきたが、向かってきた足は全部ぶった斬ってやった。4本足のタコはタコなのか?お前はタコ以下だ。ただのブヨブヨ野郎だ。


悪即斬。ブヨブヨに向けて最大級の怒りをのせてぶった切る。


「おぉおおー!」


今までになく鋭利に切断出来た気がする


「海斗さん。すごいです。巨大タコが滅多斬りです。」


「ああ、今の剣さばきは見事だったな。」


「ドローン壊れちゃったね。」


「・・・・・うん。」


「2個目だったのにね。」


「・・・・・・・・うん。」


「残念だったね。」


「・・・・・・・・」


辛い。その慰めを含んだ言葉が突き刺さる。


「そんなに、大事だったのですね。あのドローン。今度パパに頼んで買ってもらいますので、気を落とさないでいいのです。」


いや、そういうことじゃないんだ。パパに買ってもらったドローンは、今は亡き1号2号とは別物なんだよ。

辛いが、ここで立ち止まる訳にはいかない。引きつった笑顔を浮かべながら


「いや、ドローンは所詮物だから。みんなが無事でよかったよ。これからはスナッチにまたお願いするようになるから、みんなも頑張っていこう。」


「無理してますね。」


「ああ、顔が引きつってるな。」


「みんなこれ以上は触れないようにしてあげましょう。」


何か3人でコソコソやっているが気にしないで、先に進むことを選択した。

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