第84話 ドローンの悲劇

今俺は探索者ギルドに来ている。

昨日の魔核を売却するためだ。


「魔核の売却お願いします。」


魔核は全部で45個あった。金額にして92500円、昨日の分と合わせて13万円。かなり頑張ったが20万円には届かなかったので、自分の貯金から7万円を引き出しダンジョンマートへ飛行ドローン型魚群探知機を購入しに行った。

お店の人に確認すると、一番安いもので199800円だった。20万円渡してお釣りがたった200円。

なんとも言えない虚しさを覚えるが、これがあればみんなの安全が買えると思えば安いものだ。

目的のドローンを手に入れ、俺は待ち合わせ場所に向かった。


「おはよう。」


どうやら買い物のせいで俺が一番最後だったようだ。

8階層に臨むに当たって、昨日までの経験をレクチャーしておく。


「8階層なんだけど、知ってると思うけど、水辺エリアになっていて突然ワニやトビウオ型のモンスターが飛び出してくるんだよ。ワニはゴーレムほどじゃないけど硬いのと、トビウオは巨大な奴が集団で突進してくるから要注意だ。そもそも気配が感じられないから迂闊に水辺には近づいちゃダメだ。そのほかにもウーパールーパーみたいなやつは溶解液を吐き出すから要注意だよ。まあ、モンスターの探知の為の秘密兵器がこれだ。」


「ドローン?」


「ドローン型の魚群探知機だよ。これで遠くからでもモンスターの居場所がわかるんだ。」


「すごーい。海斗なんか準備良すぎない。なんか見てきたような口ぶりなんだけど。」


「昨日と一昨日下見がてら潜ってきたんだよ。」


「海斗って平日はソロなんだよね。一人で8階層に潜ったの?」


「あ、ああ。もちろんじゃないか。普段の俺はロンリー探索者だからね。ははは」


「ふ〜ん。なんか隠してない?」


「い、いや。な、何も無いって。嫌だなー。ははは。」


「まあいいけど。それじゃあ早速向かいましょうか。ところで海斗、その格好は何?」


「何ってカーボンナノチューブのスーツにライフジャケットじゃないか。」


「それはわかるんだけど8階層ってダイビングスポットでもあるの?」


「そんなものあるわけないだろ。何言ってるんだよ。」


「なんかその格好ってスキューバーダイビングをしに行くようにしか見えないんだけど、本当にそれで行くの?」


「なんか失礼な言い方だな。すでに昨日も一昨日もこの格好で探索済みだけど」


「1人でその格好で潜ったんだ。よく大丈夫だったね。」


「全然大丈夫だったけど」


ミクがなんか失礼な事を言ってくるがこの格好の何が問題だというのだろう。水辺の戦闘には最適の格好だと思うのだがミクのセンスを疑ってしまいそうになる。


「それじゃあ早速、8階層に行こうと思うけど、ミク、よかったらこれを使ってみて。俺が前に使ってたやつだけどスナッチが離れた時に自衛にも使えるし、うまく使えば十分モンスターも倒せるから。」


俺はそう言ってミクに俺が使っていたクロスボウを渡した。スナッチが戦っている間のミクが完全にフリーになっていたのが気になっていたので戦力強化の意味でもボウガンは有用だと思ったのだ。


その後、遂にK-12のメンバーで挑戦する事となった。昨日迄とは違う緊張感がある。とにかく安全を第一に考えながらやろう。

8階層の探索を始めて直ぐに水辺のエリアに出た。


「よし、ここからドローンを飛ばすから、みんなも離れて待っててよ。」


俺は買ったばかりのドローンをセットしてコントローラーで水辺まで飛ばして着水させた。すぐさまスマホの画面で水中の様子を見る。

どうやら近くに大きいのが2体いるのが確認できる。さすがは199800円払っただけのことはある。


「みんな、水中に2体いるから注意してくれ」


そう言って臨戦態勢を促した瞬間、水面が爆発してワニ型モンスターが、なんとドローンをくわえてそのまま水中に戻って行ってしまった。


「え!?俺のドローンが・・・・」


俺のドローンを餌かなにかと間違えたのだろうか、くわえて消えてしまった・・・・

俺が199800円出して購入したドローンが一瞬にして消え去ってしまった。

処女航海でそのまま帰らぬ人になってしまった。まるであの有名な豪華客船のようではないか。


「ノー!!カムバック!」


口から魂の叫びが漏れてしまった。

こんなことってあるのか?あっていいのか?

漫画とかではありそうなオチだが、実際にやられると洒落にならない。

俺は戦闘の前に生きる屍と化してしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る