第68話 ハーレムパーティ?


水曜日の放課後も4人で7階層に潜っている。


今日はシャッフルしてあいりさんと組んでみようと思うが、前衛2人が一緒に組むという事は必然的に4人ワンセットで戦うことになる。今まではずっと2人組で各個撃破してきたが、今回は別れずに4人で戦うことになる。初めてのパターンなので混乱しないよう、イレギュラーに備えていくつかのパターンを打ち合わせしておく。


基本パターンはカオリンの『アースウェイブ』を軸にしてあいりさんと俺で速攻をかける。その間他の敵はカーバンクルに足止めをしてもらう感じだ。数が多かったり、速攻に失敗した場合は2人組に分かれてしっかり立て直しを図ってから、各個撃破に切り替える。


一通り打ち合わせを終え、探索を開始するがなかなかゴーレムに遭遇しない。




「海斗は普段ソロで潜っているのか?昨日までを見てると、背後からの強襲スタイルのようだけど、誘導役がいないときつくないのか?」




あいりさんが歩きながら聞いてくる。




「いや、一応、前衛は前衛なんですけど、普段は魔核銃で中距離攻撃メインなんですよ。ゴーレムが硬くて歯が立たなかったんで、この階層に来てから、普段あんまりやらない近接戦闘に切り替えたんですよ。」




「そうなのか。それにしては背後からの強襲が妙に板についていたようだが。それとあの武器はなんだ?


見た感じステーキナイフのようだが、とんでもない威力じゃないか。どこで売ってるんだ?」




「あー。私も気になってたんだよ。パパに頼んで一本買ってもらおうかと思ってたんだけど」




ミクも一緒になって聞いてくる。




「いや、あれはステーキナイフじゃなくて一応魔剣なんです。買ったんじゃなくてドロップしたんですよ。それはそうと、あいりさんの薙刀もすごくないですか?ゴーレムを滅多斬りじゃないですか?」




「ああ。探索者になる時に父が買ってくれたんだ。もともと薙刀は小さい頃から習っていたからな。」




「父・・・」




「ああ優しい父なんだ」




「お金持ちなんですね・・・」




このやり取りも3回目だ。どうやら3人ともお金持ちのお嬢さんらしい。まあ3人とも魅力的だから俺が何も言うことは無いのだが、俺は自分で貯めたお小遣いと、木刀だけでスタートしたと言うのに・・・


世の中不公平だと今更ながら痛感する。


しかし今は同じ土俵に立てている事を自分で褒めてあげたい。




そうこうしているうちにゴーレム2体のグループに遭遇した。




打ち合わせ通り、カオリンが『アースウェイブ』を発動。


その間にあいりさんと俺がブロンズゴーレムに向かっていき、正面からあいりさんが牽制を仕掛ける。


動けなくなったゴーレムに、なぎなたの少し長めのリーチを生かしてうまくダメージを与えていく。


ゴーレムがもがいているのを横目に、すーっと後ろに回り込みそのままバルサードを一閃。ゴーレムを爆散させた。


直ぐに隣のゴーレムにあたるが、既にカオリンの『アースウェイブ』が発動しており、ミクのカーバンクルのスナッチが攻撃を繰り返している。


戦闘の合間を縫い後ろに回り込んでバルザードを一閃。アイアンゴーレムを消滅させる事に成功した。




「やっぱり海斗って忍者っぽいな。妙に気配が薄いし」


「やっぱりそうですよね。気配が消えるというか、するするっと後ろに回り込んでドカンですし。」


「わたしもそう思うのです。なんか気がついたら後ろに回り込んで一瞬で相手を葬ってますから、忍者か特殊なスキルがあると思うのです。」




「いや、特にスキルも持っていないし、忍者っぽい能力も持ってないよ。」




「それじゃあ、あの気配が消える感じは一体・・・」


「普通あんな風にモンスターの後ろに回り込めないでしょ」


「忍者じゃないなら暗殺者?」




「いや暗殺者って。犯罪者みたいだし勘弁してよ。俺はいたって普通。ノーマルだから」




そうは言ったものの、よく考えてみるとイベントが始まってから背後に回ってバルザードで仕留めるパターンがよくはまっている感じはする。


3人もこう言っているし、気配が薄いのかもしれない。


しかし本当に特別なスキルがあるわけではないので、ナチュラルに気配が薄いのかも・・・


もしかしたら、気づかないうちにモブの特性が戦闘に生かされているのかもしれない。


ちょっと複雑だ・・・

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