第29話 四階層への準備

『ウォーターボール』を使いこなすようになってから、俺は3階層に何度か潜っている。

ただ、もうレベルが上がる気がしない。

ついに、3階層での成長限界を迎えたようだ。

こうなれば、4階層に潜るしかない。

しかし、4階層に潜るには、俺の装備は貧弱すぎる。

武器は良いが、防具がない。

盾は持っているものの、その他の装備は量販店で購入したデニムパンツにスエットパーカーで今まで潜ってきたが、このままではさすがに怖い。

今までシルの『鉄壁の乙女』に守られてきたので無傷で済んだ。

しかし4階層でもそれが通用するかは、わからない。

なので、全身を守る防具が欲しい。

実は、ダンジョンマーケットのおっさんに相談済みだ。


「あのーすいません。前回盾を買わせてもらったんですけど、今度4階層に潜ろうと思うんです。全身防具なんとかならないですかね。」


「あーおぼえてるぜ。確か2階層に潜るって言ってなかったか?もう4階層なのか?」


「あー、まー、なんとか行けそうなんで。」


「ヒョロイにーちゃんだと思ったら、結構やるんだな。予算はいくらだ。」


スライムの魔核1000個のうち300個は、シルとルシェリア用に残しておきたい。

今までの稼ぎと合わせてマックスで50万 だな


「この前とあんまり変わってないんですけど、 50万までです。」


「うーん。やっぱり無理だな」


「無理ですか。」


「と言いたいところだが、このやり取りも2回目だしな。 中古でよければなんとかしてやるぞ。」


「本当ですか?」


「ちょっと待っとけ。」


しばらくすると、おっさんが奥から2つのケースを持ってきた。


「50万でなんとかなるのは、この2つだけだな。」


「こっちが革製の全身防具にタングステンプレートを取り付けたものと鎖帷子のセット」


「こっちがカーボンナノチューブで出来た全身スーツだ。」


「どっちも50万でいいぜ」


「どっちがいいですかね。」


「こっちはハイテクだ。カーボンナノチューブの方が、全身覆えて隙間なく守れる。貫通もしにくいが、薄いから当たれば痛い。」


「逆にこっちはアナログだ。革の防具の方は隙間はあるが、タングステンプレートと相まって防御力は高いし、それなりに厚みがあるから、装備している人間にダメージが行きにくい」


「どっちも一長一短あるからな。まず、試着してみろよ。」


「いいですか?お願いします。」


個人的にはファンタジーぽいので、革の防具と鎖帷子がいいかと思っているが、物は試しだ。

まず、革の防具をつけてみた。

歩いたり動いたりしてみたが・・・・

重い。

想像以上に重い。

プレートが付いているせいか、つけるだけならいいが、これで走り回るのは正直無理だ。

鎖帷子だけでも異常に重い。

こんなの身につけて戦えるやついるのか・・・

革でこれなら、ファンタジー憧れのフルプレートメイルとか絶対無理だな。


となるとカーボンナノチューブしかない。

今度はカーボンナノチューブの全身スーツを着てみる。

ちょっと締め付けられ、思ったより重さもあるが動けないほどではない。

全身を覆うためか、ダイビング用のウェットスーツのようだ。

これで探索しているとSFか何かのようでちょっと恥ずかしい。

恥ずかしいが他に選択肢がないので


「これください」


「おう」


「しかし、探索者の装備って、どれも高いですね。」


「当たり前だろ。数もでない上に特殊なものが多いからだよ。普段から、そんなの着てるやついねーだろ。」


「あー確かに」


「それはそうと、4階層の情報はしっかり持ってんのか?」


「一応、テレビとかスマホで調べてました。」


「じゃあ、大丈夫だとは思うがあれの対策はしてるのか?」


「ああ、あれですか。」


「俺、あれは結構得意だと思うんで、多分大丈夫です。」


「それならよかった。まあ死なねー程度に頑張れや」


「はい。ありがとうございます」


俺は、明日ついに4階層に潜る。



あとがき


フォローと☆☆☆を★★★にして頂いた読者の方本当にありがとうございます。




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