第12話 レアモンスター

今日も放課後に、シルフィーの庇護下のもと、2階層で狩りに来ている。

先日の反省を活かして、全面的にシルフィーを頼っている。

知らない人が見ると、ちょっと情け無く見えるかもしれないが、そんなのは完全無視だ。

おかげで、順調に狩りをすすめることができている。


途中珍しく、他の探索パーティと遭遇した。

3人組パーティで俺と同い年か、少し上ぐらいに見えるがゴブリンを 3人がかりで仕留めにかかっている。

前衛の男がゴブリンを誘導して、中衛、後衛の担当がそれぞれゴブリンの死角に入り、攻撃を伺っている。

30秒程のせめぎ合いの後、死角から一気に攻め立て、勝負は決まった。

見ていて正直うまいと思ってしまった。

勝負に勝った3人は、ハイタッチをして喜んでいる。

目線の合った俺は軽く3人に会釈をして早々に立ち去った。

理由はシルフィーをあまり見せたくなかったのと もう一つ。

パーティメンバーの中衛と後衛は女性だった。

しかも結構可愛かった。

くそっ。リアル リア充か。

前衛の男も確かに、少しだけカッコ良かった気もするが世の中理不尽だ。

今でこそシルフィーがいるが、2年以上ソロでやってきた俺からすると、完全に敵だ。

くそっ。うらやましい・・・・アオハルかよ 。くっ・・・・


ダンジョンでは広さと多岐にわたるルートの所為で他の探索者に会うことはそんなに頻繁にはない。

特に一階層でスライム狩りをしている時には、ほとんど出会わなかった。

2階層に進出して、時々見かけるようになったが、今のように、戦闘シーンに出くわしたのは、初めてだった。

3人組なのであまり参考にはならなかったが、人の狩りを見るのは初めてだったので、結構新鮮だった。

俺も、3人パーティになったら、あんな風に戦うのかなと、イメージが膨らんだ。

もちろんイメージの中の3人目は可愛い女性だ。

次こそ可愛い女性をパーティに入れたい。

幼女ではない同世代の女性を。


そんなバカなことを考えながら、歩いていると 先に 発光する骨、

いや発光するスケルトンがいた。


「シルフィー、あれってスケルトンだよな。」


「光ってますけど、スケルトンですね。」


「もしかしたら、金色スライムと同様レアモンスターかもしれない。確実に倒すぞ。」


「かしこまりました。」


「シルフィー『鉄壁の乙女』を使ってくれ」


「かしこまりました。『鉄壁の乙女』」


襲ってきた光るスケルトンは、光の壁で立ち往生している。

それをいつもの通り、タングステンロッドでぶっ叩く。


「ガンッ!」


「ぐっ、かたいっ。」


いつもならこの一撃で骨を粉砕できるのだが、鈍い音がして攻撃が通らなかった。

おまけに、手が思いっきり痺れてしまった。

やっぱり普通のスケルトンとは違うようだ。

俺とは完全に相性が悪い。


「シルフィー 『乙女の鉄壁』が解けたら、すぐに『神の雷撃』を頼む」


「かしこまりました。 いきます。『神の雷撃』」


「ズガガガーン」


俺では一切ダメージを与えられなかった、光るスケルトンは、シルフィーの一撃で、跡形もなく消え去っていた。

俺は消失した跡を凝視していた。

シルフィーの時のように、何かドロップアイテムがあるのではないかと思ったからだ。

だが残念ながら、ドロップアイテムらしきものはなく、魔核が1個だけ残されていた。

その魔核を拾い上げてみると、通常の魔核と違って少し赤みがかっていた。

少しだけ不思議に感じたが大きさも通常のものと変わらないので、スキル連発で頑張ってくれた

シルへのご褒美に渡した。

シルも満足そうに摂取していたので俺も嬉しかった。


その後、魔核を売るためにギルドに寄った。

いつものように日番谷さんに担当してもらい


「日番谷さん、光るスケルトンって知ってますか?」


「どうされたんですか?」


「いや実は今日、2階層で遭遇して倒したんですよ。」


「高木様。それ本当ですか?」


「もちろん本当ですよ。」


「では魔核をお持ちですか?」


「い、いや。少し赤みがかった魔核を手に入れたんですが、次の戦闘中に無くしてしまったみたいで・・・」


俺はシルフィーに摂取させたとは言えず、とっさに誤魔化した。


「落とされたんですか。赤みがかっていたとの事ですので、まず間違いないですね。」


「何がですか?」


「高木様が倒されたのは、滅多に現れないレアモンスターです。赤みがかった魔核は通常の魔核と違い特別な価値があるのです。」


「え?そうなんですか。どのぐらいの値段ですか?」


「大変申し上げにくいのですが200万円以上はすると思われます。」


「200万円・・・・」


「また会えるかもしれません。気を落とさず頑張ってください」


「はい・・・・」


やってしまった。何も考えずにシルフィーに渡してしまった。


俺のばか・・・・


200万円が一瞬で無くなった。

『レアモンスター イコール 高額 』考えれば誰にでもわかることだ。

俺はなんてばかなんだ。

再起する自信がない・・・・


再び俺がダンジョンに潜る気力を取り戻したのは、それから3日後だった。

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