第11話 レベルアップ

俺はその後もシルフィーの『鉄壁の乙女』の庇護のもとゴブリンを順調に狩っている。

気になる『鉄壁の乙女』のMP消費は5だった。

『神の雷撃』の半分なので、シルフィーの魔核摂取も半分で済んでいる。

あまりに簡単にゴブリンを倒すことができるので 、調子に乗った俺は、ボウガンがあれば一人でも倒せるんじゃないかとやってみた。


「シルフィー 今度のやつは、俺一人で狩るから手を出さずにおいてくれ」


「かしこまりました。」


俺はボウガンをあらかじめセットして再度 ゴブリン戦に臨んだ。

見つけたゴブリンに気づかれないよう、少し遠目の20mぐらいから狙いをつけてボウガンの矢を発射。

見事に腕に命中したが、こちらに気付いたゴブリンが


「グギャー ! ギャー!!」


と怒り狂って突進してきた。

焦って連射するが、当たらない。

焦っているのもあるが、動くターゲットは全く別物だった。

全く当たらない。

あたふたしているうちにゴブリンは目の前まで迫っていた。

迫り来るゴブリンにまた死を覚悟してしまった。


『やばい !今度こそ死んでしまう!!』


そう思った瞬間 、悪あがきで放ったボウガンの矢が、目の前にいたゴブリンの胸に命中した。

怯んだゴブリンを見て、冷静になる間も無く、矢で追撃するとゴブリンは消失した。


「ふーっ」


大量の冷や汗が出ているが一息つくことができた。


「ご主人様 さすがです。 かっこよかったです。次もお一人で狩りをされますか?」


一切の嫌味を含まない純粋なるシルフィーの声。

俺は先程の戦闘で破れそうな大きさになった心音を、引きつったポーカーフェイスもどきを使い、誤魔化しながら


「うーん。一人で狩るのは満足したから、次からはやっぱり2人で狩ろう。1人より2人の方が楽しいだろ。一人で狩るのもいいけど、やっぱりシルフィーと一緒が一番だな。」


「そんなに私のことを思ってくださっているんですね。嬉しいです。」


今までにないような、弾けるような声と笑顔でシルフィーの返事が返ってきた。


・・・・・・・その笑顔が辛い

・・・・・心が痛い

・・・・魂が痛い

・・・俺はやっぱり クズだ


死にたくなるような罪悪感を感じながら


「あたりまえだろ。シルフィーの事が一番大事だからな。」


「ありがとうございます。これからもがんばります。海斗様がご主人様で本当によかった」


・・・・・・その笑顔が眩しすぎる

・・・・・眩しくて目が潰れそうだ

・・・・その声で耳も潰れそうだ

・・・神罰がくだるかも


シルフィーと一緒だとあまりに簡単に倒せるから、ちょっとは自分が強くなったような錯覚をおこしていた。


やっぱり俺はモブでゴブリンは強かった。


これからは調子に乗らずに、シルフィーさんを頼りに地道に頑張ろうと決心した。


それから俺は同じやり方で10匹ほど倒した。

そして遂にその時はきた。

俺は遂にレベルアップした。


高木 海斗

LV 6

HP18

MP 6

BP 16

スキル スライムスレイヤー

ゴブリンスレイヤー(仮)

装備 スチールシールド

ピストルボウガン

タングステンロッド


今度は特にスキルが顕現することはなかったが、ついにLV6だ。

探索者を初めて2年間でLV1からLV3に 2つしか上がらなかった。それがシルフィーと一緒に狩りをするようになってまだ4ヶ月程度なのに、既にLV3からLV6に3つも上がった。

俺の中では劇的に探索者ライフが変化した。

シルフィーを顕現させてから、既に2回も死にかけたけど、俺にとって憧れだった 夢とロマンの探索者ライフが少しだが送れてる気がする。

未だ英雄になれる気は、残念ながら一切しないが、万年スライムスレイヤーだった俺が今はゴブリンスレイヤー(仮)に

なっている。

今までにない手ごたえと充実感にあふれている。

本当にシルフィーと出会えて良かった。

シルフィーは今のところ俺にとって女神様だ。

10億円ロストの衝撃は未だ完全に癒えてはいないが・・・・


「ありがとうシルフィー」


心からの言葉が自然と口をついた。

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