第22話 ユニークスキル(1)
村の出入り口に向かって村の中央通りを歩くこと十数分、ようやく道行く人がまばらになってきた。
そろそろかな?
「さっきのアレは何? それと、どうして脚を吹き飛ばしたの?」
予想通りカリーナが口を開いた。
予想と違っているのは顔の強ばりがまだ取れていないこと。
「脚を吹き飛ばしたのは敵の戦力を削いでおきたかったのが第一の理由。第二の理由は俺に手を出すと痛い目をみると知らしめたかったからだ」
取り敢えず、答えやすい質問から回答する。
「意図は分かるけど少しやり過ぎたかもしれないわね」
難しい顔をする彼女に言う。
「カリーナも利き腕の
「ある程度の水魔法が使えれば腕の腱を斬られたくらいはすぐに治せるもの。でも、脚を吹き飛ばしたとなると高位の水魔法でないと治せないじゃない」
腱を元通りにするくらいなら中堅クラスの冒険者パーティーならいても不思議はないし、この村の教会にも数人いるという。
だが、失った脚を治せるのは王都の高位神官クラスでないと無理らしい。
もちろん、費用も高額だ。
「あの二人が戦力として復帰するとしても大分先のことなんだろ? 狙い通りだよ」
なるほど、
多少の怪我をしてもニケがいれば何とかなりそうだな。
「あんな簡単に脚を吹き飛ばす人を相手に、彼らの仲間が仕返しにくるとは思えないから、ダイチさんの思惑は外れじゃないわね」
カリーナから見ても義理堅い連中には映らなかったようだ。
「と言うことは、今後はそう簡単に絡まれないってことだな」
「絡まれないけど、不意打ちや闇討ちの可能性が出てきたってことよ」
ジト目を向けるカリーナに言う。
「夜は交代で見張りだな」
カリーナに謝るが、「そんなことよりも」、と彼女は獰猛な笑みを浮かべて言う。
「もっと問題があるわ。闇討ちされそうな人を泊めてくれる家や宿があるのかってことよ」
「もしかしてテント?」
「そうなるわね」
カリーナが落胆の表情で深いため息を吐く。
「本当に、ごめん」
拝むように両手を合わせて謝る俺に、「もう済んだことだし、いいわ」と流して次の質問を口にした。
「で、さっきの脚を吹き飛ばしたアレは何?」
カリーナの顔が強ばる。
「アレって?」
「
「何だ、知ってるんじゃないか」
「知らないわ」
魔法なのか何らかの特殊なスキルなのか判断が付かなかったので、攻撃スキルと仮定してカマを掛けたのだという。
まあ、カマにもなってないけどな。
「アレは俺にしか使えないユニークスキルだ」
「ユニークスキル……?」
驚く彼女に軽い口調で聞く。
「こっちの大陸にはユニークスキル持ちはいないのか?」
「いないことは、ないけど……。もの凄く少数なの」
「それは俺の祖国でも一緒だ」
「……そう、ユニークスキルなのね」
黙り込んだカリーナに聞く。
「どうしたんだ? 他に質問があれば答えるぞ」
「え?」
「ん?」
驚く彼女に笑顔でうながす。
「あの……、ユニークスキルについて聞いてもいいの?」
「答えられる範囲ならな」
そう言って俺はユニークスキルと偽った攻撃方法について簡単に語る。
「鉛や鉄の弾丸を瞬時に作りだして、それを火の力、爆発力でターゲットに撃ち込むものだ」
先ほど撃ちだしたのと同型の弾丸を手のひらの上に出現させる。
「こんな小さな鉛の塊を撃ち込んだだけで脚が吹き飛んだって言うの!」
「この弾丸を爆発の力を使って高速で撃ちだすとさっきのような破壊力を生むんだ。もっと大口径――、大きな弾丸なら破壊力はさらに増す」
「もっと大きな弾丸も撃ちだせるみたいに聞こえるわね」
「どうだろう?」
彼女と会話しながら取り寄せられそうな武器をステータスボードに次々と表示させていく。
これだ!
選択した武器を取り寄せると
「はぐらかしたつもり?」
「カリーナ相手に嘘やごまかしはしないよ」
「信用するわ」
「こんなのも撃ちだせる」
手品のような手つきで芝居気たっぷりに、対物ライフル弾を右手に出現させた。
カリーナが息を飲む。
「ちょっと、想像したくないわね……」
「実験に付き合って欲しいって言っただろ? あれはカリーナにユニークスキルを見てもらって、色々と感想を聞きたかったのもあるんだけど?」
ユニークスキルの実験をこれからやろう、と村の外に見える森を視線で示した。
「そう言うことだったの……」
当初の予定は攻撃手段としてデザートイーグルの有用性の確認だけのつもりだった。
だが、先ほどの戦闘でデザートイーグルと
ならば、もう一歩踏み込んでユニークスキルと偽った
手始めがデザートイーグルと対物ライフルだ。
「クラウス商会長にも報告しないとならないんだろ?」
「そうね」
否定しないんだな。
俺は内心で苦笑しながら言う。
「なら、もっと詳しい能力を確認した方が良いんじゃないのか?」
俺とカリーナはそのまま森へと向かった。
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