フィクションか確認する生徒

ゆきじ

第1話

僕の名前はサム。皆からサムって呼ばれているよ。もうすぐ小学一年生さ。父さんはとある小説で『本当のような嘘、嘘のような本当』で有名になった。僕はそんな父さんを凄く尊敬している。尊敬している父さんだけど、一風変わった教えがある。


『今ある物が本物か嘘か常に疑問を持ちなさい。それが今後役に立つ』

お決まりの口癖はこうだ。

『友達の言うこと、ネットであがっていること、僕が言うことだって、真実とは限らない。常に疑問を持ちフィクションかノン・フィクションか考えるべきだ。』

父の教えとこの口癖は365日、毎日1時間は熱弁されていたので、頭にしみついている。

母さんは父さんの発言に対して

「そういうのはもう少し先でいいんじゃないの」と心配そうに父さんに聞くと、必ず父さんと母さんの喧嘩が始まる。そこに僕が

「この喧嘩はフィクションですか、ノン・フィクションですか」と母に聞くと、母の怒りはマックスになり、一週間は口を聞いてもらえず部屋に閉じこもってしまう。


そんな毎日の中、明日は僕の入学式

入場している時、皆が拍手をしてくれる。あたたかい。でも僕は「これは皆本心で拍手をしているのかな~気になる~」と思ってずっとソワソワしていた。

初めに校長先生の挨拶があった。そこで校長先生は学校での経験談や入学した生徒への感謝の気持ちを述べていた。その言葉に対してもソワソワしてしまい、ついには手を挙げて聞いてしまった。

「お話ありがとうございます。僕は1年4組のサムです。今、校長先生が話した内容はフィクションですかノン・フィクションですか。また、入場したときの皆の拍手は本当に心からの拍手だったのでしょうか。」と聞いた。

その瞬間、体育館中が一気に氷ついた。担任の先生が慌てて僕の近くに来て頭を下げるように言ってきた。また校長先生は一瞬にして顔が真っ赤なったものの、台においてある水をごくりと飲み怒りを鎮めてこう言った。

「1年4組のサム君だったかな。たくさんの人がいる前で、手を挙げることはすごいぞ。とても勇気のいることだ、皆拍手・・・ 本題に移ろう。勿論ノン・フィクションに決まっているじゃないか。僕はこの学校で7年間校長を務めているが、生徒を見守り、時には一緒に給食を食べることでコミュニケーションを取って、どうしたら皆が快適に学校生活を送れるか考えてきた。また、君を含め可愛い生徒たちがここで成長する姿を近くで見届けられるのは、僕にとって幸せなことだしワクワクしているよ。あと、ここにいる皆は心から君たちの入学を祝福しているぞ、入学してくれてありがとう。」

校長先生のスピーチが終わった後、また体育館中に拍手が鳴り響いた。

 入学式の後、初日から親子そろって担任の先生に呼び出され2時間の三者面談となり母さんはとても恥ずかしそうに僕の代わりに頭を一生懸命下げていた。母さんからの説教も2時間続いたが母は、

「でもサムは、お父さんのモットーを守っているだけだからね・・・お父さんと話すね」と少し困った顔で言った。

僕はそんなに悪いことをしたのだろうか。

その日の夜はとにかく空気が重かったので、すぐ布団に入って寝たが、トイレで起きてしまい、父さんと母さんの話を聞いてしまった。

母さんが言った。

「サムのことで話があるんだけど」

父さんは言った。

「何だい」

母さんは言った。

「今日、入学式だったんだけど・・・校長先生にフィクションかノン・フィクションか聞いちゃったの。あの子自身はあなたの教えを守っているだけだと思うのよね。後、何回も聞いたら友達だっていなくなっちゃうから、小学3年生になるぐらいまでは純粋に育てたいの」

父さん

「・・・」

黙り込んだが父さんは話を切り出した。

「そのことについては理由が3つある。」

「1つ目として、サムには僕と同じように小説家になってもらいたい。その感覚を育てたい。そうすることでお金のトラブルや人に騙されたり、周りに振り回されたりする心配はなくなる。常に一つ一つに疑問を持つことで、クリエイティブでいられる。」


「2つ目として、この世界は嘘でできようとしている。4252年から国の決まりで20歳になったら、AIチップを埋め込められて、国に体を支配され40歳になる頃には体の半分がAIになってしまうんだぞ。国の支配が始まり大人として十分な力を発揮できなかったらAIチップを抜かれ寿命が半分になる。これが来年から始まろうとしている。サムが偽りか本当かを見抜く感覚を養えれば、この世の中の異変の打開策を考えてくれるはずだ。」


「3つ目として、本当はここ自体地球ではないじゃないか。酸素YX205を飲んで生活しているじゃないか。母さんだっていつも夜ご飯に酸素YX205を混ぜているし、サムにサプリの存在自体を隠しているじゃないか。それはどうしてだ。そんなの架空の生活でしかないと思わないか。しかも20歳の壁を突破できなかったら、YX205の配給率が減ってしまうぞ。仲間は必要だが、今は、嘘か本当か見極めて正しい答えを出せる人になる方が大事で、友達は高校から作ればいい。サムには、この国や人の現状を小説家として世に知らしめてほしい」

母さんは言った

「AIチップって何の話?サムの栄養を整えるためのサプリだと・・・」母さんは気絶してしまった。

父さんは言った。

「母さんは知らなかったのか・・・」

サムは鳥肌がたち布団に入っても一睡もできなかった。


次の日

母さんは父さんに言った。

「頭がパンクしそうだったけど、あなたの言うとおりにするわ」


そして4254年


世界はどうなったのか。   サムは?   父さんは?

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フィクションか確認する生徒 ゆきじ @yukiji-takaji

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