炭酸抜き水
委員長
第1話 ピェールヴィ
ユジノサハリンスクを南北に横切る本通りに面した一角に、<ピェールヴィ>という名のスーパーマーケットがある。こちらの言葉で訳せば「第一」である。この店が当地においてどのように「第一」であるのか、私は知らない。
まず真っ先に考えるのは、市内最初の店であるからという理由だ。しかしこの考えが誤っていることは、街をふらふらとほっつき歩いているうちに分かった。<ピェールヴィ>は見るからに新築の装いをしていて、私は他の場所でこれよりずっと古臭い、八百屋のような雰囲気さえ残るスーパーマーケットをいくつも目撃していた。
次に考えるのは、チェーン店の「1号店」を意味するものであるということだ。そうとなれば当然、<フタローイ>、<トレェーチィ>(それぞれ「第2」「第3」の意)の名を冠するスーパーマーケットがあるはずだ。私は、しかし、またも散歩を通して、この推察が外れたことを思い知った。この街には「第一」が少なくとも10店舗存在したのだ。10番目にオープンした「第一」は、つまり<第十「第一」店>と見なせるわけである。きわめて不可解な事象である。
最後、私の思考実験が導出した解は、それはそれはつまらないものであった。「この島で一番のスーパーになりたい」という純粋無垢の権化のような理由から名づく、というものだ。いかがだろうか。あまりにも稚拙であり、考えの至らなさが極まっている。街の散策と崇高な思考実験がこれ以上の回答を提示してくれることはもうなかった。
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