17:00
「わぁ…初雪だ!」
「そうだね。綺麗。」
上を見ながら手のひらを思わず空に向ける。
真っ白の空から落ちてくる。
隣にいる君はとても嬉しそう。
今年はやっと君のそばにいれる。
君はまだあの人のことが忘れられないとたまに私に気づかれないように涙を流してる。
でも少しずつ、少しずつその気持ちが私がいることで楽になったらって願ってるよ。
その気持ちを乗り越えられるのかは君次第。
応援するしかできないけどどんなに時間がかかっても、そばにいようと思ってる。
「あ、あそこの楽器屋さん入らない?」
「いいよ。なんか楽しそうだね。」
「ね!」
君が笑顔になるなら私が出来ることなんだってするよ。
[カランコロン…カラン…]
楽器屋さんの扉を開く。
[May happiness come to everyone who listens.
皆さんこんばんわ。明日のクリスマスが終わるまでひとつまみの奇跡をお届けします。]
楽器屋に入るとラジオの放送が聞こえてきた。
中にいる店員のおじさんが聞いていたみたいだ。
「いらっしゃい。好きに見てってね。」
そうおじさんは言うとレジに座り、のんびりラジオを聴き始めた。
「ありがとー、おじさん。」
そう言うと楽器や譜面を見始める。
どうしたんだろ?
なにか始めようと思ってるのかな?
「見て!このマラカス、フルーツの形してる!可愛い!」
シャカシャカと軽くダンスしながら笑顔で伝えてくる。
「可愛いね。何か買ってく?」
「うん!あっちのオルゴールも見たいんだよね。」
「いいね、結構たくさんあるんだね。」
君はそっと一つのオルゴールを手に取りネジを回す。
[では、次の曲、雪の華。あなたに幸多からんことを。]
オルゴールとラジオから同じ曲が流れる。
「わっ!こんなことあるんだね!びっくり!」
「ね、私もびっくりした。」
2人で笑い合う。
こんな時間がずっと続けばいいのにな。
「記念にこのオルゴール買おう!」
「うん、そうしよ。」
「おじさんこれください!」
「はいよ。紙で包むから待っててね。」
「はーい。」
店の中から外を見る。
さっきまでチラチラとしか降っていなかったのに
外の人が傘をさすほど多くなっている。
「ありがとね。またきてね。」
おじさんが手を振り私たちを見送る。
外に出て私の長いマフラーを隣にいる君の頭と私の頭にかぶせる。
「ありがとう。」
君が今日一番嬉しそうに笑う。
「うん、どっかのカフェ入ろっか。」
「うん!」
私は肩を抱きながら君が滑らないように歩く。
こうやって近づける冬が好きだ。
君が私を必要になくなる日まで一緒にすごそう。
それまで私は離れたりしないよ。
2人で寄り添ってカフェに向かった。
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