カケラ

染井綾

001.秋の旅立ち

 うるさく部屋に鳴り響く音を止め、身体を起こす。寒さで強張った身体をどうにか動かして、コーヒーを淹れる。

 今日もまた予定の時間を過ぎてしまった。どうしてこうも朝は時間が足りないのだろうか。誰かが世界を早送りしているのではないか。そんなことを毎日考えている気がする。

 家を出るとより一層寒さが身体を強張らせる。こんなに寒いだなんて思わなかったなと服装に少し公開しつつも、足を動かす。

 景色も気温を追いかけるように少しずつ冬に近づいてきている。

 階段を登ろうとすると、イチョウが集会を開いていた。なんの相談をしているのだろうか、これからどこに行くかの相談だろうか。それともただの井戸端会議かもしれない。


 気温だけではなく視覚的にも秋の旅立ちを感じた。そんな朝。

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カケラ 染井綾 @_Ryo

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