[卒業研究] 非人類文化圏におけるヒトのヘテロ性別個体間に発生するつり橋効果発生機序の考察

RASE

第1章 序論

序論

一般に,ヒトの感情はイベントに対する解釈・認知によって誘起される経路が基本である[1] が,イベントの種類によってはその限りではなく,イベントに対して,直接感情が誘起されることがあるとされている.後者の経路では,解釈・認知が感情発生の後に起こることになり,このような感情を前者の場合と区別して ”情動” とよぶ[2] .つり橋理論・効果[3] は,後者の情動発生経路を利用して,誤った認知に誘導できる可能性があるとする学説,または誘導された結果生じる効果を指す心理学現象である.この学説に対してダットンとアロンらによって行われた実験は,ポジティブに解釈可能な結果を示している.しかしながら,様々な交絡因子やバイアスが実験に含まれる可能性から,心理学者の中には懐疑的なものも多い.また,整備された実験系の設定が非常に難しいことから,学説の証明に至る実験はいまだに行われていない.


本稿では,つり橋効果の発生が十分想定される系に置かれた異性の2人組を対象に実施された詳細な観察記録に基づき,当該効果の発生機序[注釈1: 実際20軒中に効果が生じたか否かについては不明] について分析と考察を行った.ここで, ”つり橋効果の発生が十分想定される環境” とは,非人類文化圏において,ヘテロセクシャルかつ繁殖適齢期の2名の異性が一定期間孤立して生存することを要求された系のことを示す.


また,本実験の被験者には筆者も含まれる(実験の被験者に筆者が含まれることは適切ではないが,回避することは不可能であった)ため,観察の記録については被験者らによって精査された上で,三人称で行われる.


本稿は,まず,次章で観察時の記録を最小限の加工にとどめて掲載し,読者との共有を図る.その後分析と考察を進める構成とする.やや変則的な構成ではあるが,実験の性質上適した形式であることが,読者に認められることを強く期待する.

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