第5章
第1話 悪魔との取引
帝都の外れの住宅街にある探偵事務所に旋律が走った。
「今…何と?」
助手がまとめていた書類を床に落とした。
「仕事したい」
机に向かって椅子に座り顎に手を組み探偵は真面目な顔で答えた。「仕事が欲しい」
空耳か?夢か?熱か?それともイタズラか?
「何でもいい、仕事無いのか?」
空耳ではない、落ち着け、ならば消去方だ。自分の頬を引っ張る 痛い 夢じゃない。探偵の額と自分の額に手を当てた 熱はない平熱だ、残すは…
「先生冗談ですよね、いつもの先生ならそんな事言わないですよ、普段すぐに遊びに行ったり昼寝したり競馬に行ったりする先生がそんな事言うはずがないですよ。そうですよ、先生は私をからかっているんですよね、だからこんなこと言って…」
「こないだの
本気だ、先生は本気で仕事をしようとしている。
「先生…私…私、先生がようやく仕事をしたいって言うのをどれだけ待ったか…」
嬉し涙が零れそうになった。いや、少し鼻水と一緒に零れた、そしてふと気づいた。
「先生、さっき何と」
「仕事が欲しいと」
「いやその前の」
「このままだと追い出される」
「冗談じゃないですよ!ここを追い出されたら私はどうすればいいのですか!路頭に迷うなんて絶対に嫌です!」
事務所の一室が私の住居になっている、追い出されるのは困る。
「待って下さい、今確認しますので」
急ぎ仕事の依頼を確認したが予定表は白紙だった。助手は両手を床に着き落胆した。
「終わった、何もかも…」
落胆する助手に探偵は微動だもせずに話した。
「そういえば印刷所の社長が何かこまってるとかどうとか言ってたな」
それだ、助手に一筋の光が差した。
「私、社長の所にいってきます。仕事貰ってきます」鼻声になりながらそそくさと支度をし、自転車に乗って走り出した。
探偵は事務所の外で助手の後ろ姿を確認した後、通りの角に振り返った。そこにはハンチング帽をかぶった幼ない少女がこちらを見ている。探偵は指先で合図を送った。少女は手を振り角へと消えた、数十秒後建物の角から黒塗りの車がこちらへ向かって来た、そして事務所の前に止まった。
この国では車はお目にかかる事があまり無いが今目の前に止まった車は特にだ。高級感より威圧感を感じる。運転席の扉が開いた、そこから先ほどの少女が降りて来て後部座席の扉を開けた。車内から黒のつばの付いた帽子をかぶり、黒いスーツを着た男が降りてくる。
右手には金属製の鞄を持ち、手首と取っ手に手錠がかけられている。
「あいつが戻って来るまであと30分ほどだ。用があるならさっさと済ませろ」
探偵は嫌そうに答えた。
「久しぶりの再会じゃないですか、もっと喜びましょうよ叔父さん」
甥は不適な笑みを浮かべた。
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