空色パレット
白闇エナンカ
No.1 桜咲く始まり
僕の名前は「空星 双葉(そらほし ふたば)」、普通の花宮中学三年生です。
特に好きなことは、独りで遠くの街を散歩することで、苦手なことは、他の人と行動する、「団体行動」が出来ません。
なので、友達は一人もいません。
過去にいじめを受けていたから、あまり嬉しさや楽しい感情が無く、いつも暗い表情になっている。
けれど今年になって、孤独感や寂しさを強く感じ始めた僕に、曇っていた空に光が差し込むような転機が訪れた。
一学期の始業式を終えた後、僕は「3ーB」の教室に入る。
中には、持ってきては行けないはずのスマホを出して何かを見せ合う女子六人に、カードゲームをする男子達のグループがいる。
見るからに、今年のクラスは、女子より男子の方が多いことが分かる。
前の黒板には「指定席一覧」が書かれていた。
「僕は…一番後ろでグラウンド側の窓辺りか…」
そう確認した僕は、指定された席に座って、窓からの景色を眺める。桜は綺麗に咲いているが、今日はほとんどくもで「太陽が見えないな…」
数分後…
今年の担任の先生が教室に来て、黒板の指定席一覧を先生が黒板消しで消した。
消し終えた先生は僕たちに、
「始業式後に元気なのは良いことですが、早速転校生を紹介します。」
すると、あまりに唐突なため回りの生徒達がはなしを止め、それぞれの席に移動した。
そして、全員揃ったところで、
「入ってください。」
そう先生が言うと、
カララ…
誰かが入ってくると、曇り空から太陽の光が教室に差し込む。
教室が協会みたいな雰囲気になった。
「初めまして!私は『荒木 暦(あらき こよみ)』です! 短い間ですが、よろしくお願いします!」
とても元気な女子がやって来た。
どうやら彼女もこのクラスの生徒らしい。
すると生徒達の目がビー玉の様に丸くなり、僕の瞳にも光が映し出す。
みんなは、さらりとした蒼白い髪、顔がとてもかわいいしスラッとした体型だからそうなると思う。
けれど僕は、彼女の瞳で目を丸くしている。
まるで、一つも雲がなく透き通ったような空に、純粋な太陽の輝きが彼女の瞳に映し出している。
その輝きを目の当たりにした僕の胸が、少しだけ暖かくなっていく。
けど、どうしてなのかはその時の僕にも分からなかった。
自己紹介を終えた後、クラスのみんなが少しざわつき始めたが、僕はその理由をすぐに分かった。
それは、その転校生が「何処に座るか」である。
ちなみにこの教室の机が三席空いている。
そのため、特に男子達は「近くに座って欲しい」という表情が丸見えな人が何人かいる。
まるで、争いが始まりそうな雰囲気である。
僕は、その事は気にしていないが、一つだけどうしても気になることがあった。
それは…
何故僕の隣も空いている?
確かに指定席には彼女の名前は載っていなかった。
「先生次第かな」と僕がそう呟いたが、
「では荒木さん、後三席空いていますから…」
他の生徒達は「ここにきて、こっちに座って」と、まるでトイプードルのような眼差しである。
そして、彼女は…
「では…あそこの席に座ってください。」
そう言って指差した方向が…
なんと、僕の隣である。
その瞬間一斉にみんな同じタイミングでこちらに向き、男子達は敗けを認めた表情や認めずに睨むような表情で見られ、女子達は「よろしく」と言って何故か拍手された。
正直、男子達にはとても申し訳なく感じた。
数分後…
どうしたら良いのだろうか…
僕の隣に、人が束のように集まってくる。
とても耐えるのが精一杯だ。
授業後も集まってくるので、今日はトイレでやり過ごし、給食では早めに食べ終わらせ、昼休みは誰もいない屋上で過ごすことにした。
僕にとって、昼休みに屋上で過ごすのは、僕だけの時間のような感じで、雨の日以外はいつもここに行く。
すると、誰かが僕の肩を優しく叩いた。
「だ、誰!」
僕がそう言って後ろを振り向くと、
「ごめんね、驚かすつもりじゃないから。」
荒木さんが僕の目の前に立っていた。
「あ、荒木さん!?」
おかしい、だってさっき…
給食の後、
「荒木さん!せっかくだからバスケしようよ!」
誰かが荒木さんに誘いがあった筈なのに!
僕はあわてて逃げようとしたが、
「待って!あなたと話がしたいの!」
荒木さんはそう言って僕の左腕を掴んだ。
僕は荒木さんの困った表情を見て、僕は逃げるのを止め、どうしてここに来たのかを聞くことにした。
「あの…他の人達とバスケをしに外に行ってたはずですが…」
すると、荒木さんはにっこり微笑んで、
「だってさっきまで私に話し掛けるどころか、休み時間では私から離れるから…少し心配して、バスケの誘いは明日にしてもらうように断ったの。」
荒木さんは、話を続ける。
「それに、初めてあった時のあなたの目を見て…仲良くなりたいから来た!」
荒木さんは僕をかなり見つめる。
もしも、僕にも友達が居てくれたら…
「じゃ、じゃあ一緒に…」
会話するのがなれていなかったため、小声でそう答える。
「早速だけど…名前は?」
確かにまだ自己紹介していなかったような…。
「えっと…空星 双葉です。」
「よろしく双葉君!」
僕は、荒木さんに一つ伝えたいことがある。
「荒木さん、あの…僕のこと『ソウ君』て呼んでくれたら嬉しいです…」
やっぱり恥ずかしい…だって『ふたば』って女の子っぽいから『双』っていう漢字は『ソウ』でも言うから、カッコいいな…って思って。
「じゃあソウ君、私のことは『荒木さん』じゃなく『コヨミ』って呼んでね。」
僕はそのとうりに…
「うん。よろしくです、コヨミさん。」
「ソウ君、『コヨミ』って呼び捨てで呼んで!」
どうやら『さん』や『ちゃん』とは呼んで欲しくないらしい…
「じゃ、じゃあ…コヨミ。」
「うん!」
すると、突然コヨミは僕をぎゅっと抱きしめた。
最初はものすごく戸惑いがあった。
けど、なんだかぽかぽかと感じる。まるでお布団を洗濯した後で感じるおひさまの匂い。
「暖かい…」
キーンコーンカーンコーン
どうやら昼休みが終わりもうすぐ五時間目…
「あわわ、急がないと次は理科だったよね!」
「移動教室になるから、早く戻ろう。」
そして、あわてて教室に戻り、教科書や筆記用具を持って急いだが、
「はい!今から理科を始めます。」
無事に授業に間に合った。
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