第71話

『ほほーいと、土のことならなんでもお任せじゃよ、ワシは土の精霊、ふぅむ。南の国にあるダンジョンがえらいことになってるな。西にあった18の街のうちの1つがやけに静かだのぉ、って、おらぬ。見つからぬぞ。サラマンダーのやつ、どこに雲がるれしておるんじゃ』

 南の国?西の街?見つからない?

 えーっと、もしかして、私が霊力を広げるみたいに、ノームおじいちゃん、気を広げてる?いや、まさか、世界中に?

『ぬお、地上におらぬようじゃな、サラマンダー、火の中にでも隠れておるのか。世界中探したが見つからぬ』

 あ、まじで世界中……。すごいな。ただのおじいちゃんじゃないんだ。

『と、これで魔力が4分の1くらい減ったでの。回復するにはかなりかかるんじゃ。たっぷり飲まねば行かぬ』

 ……。ただの、のん兵衛じいちゃんですね。

 皿を渡す。

『ごくごくと、うむ、魔力がしっかり回復……って、なんじゃこりゃ。前の魔力回復薬の何倍も回復するようじゃぞ?それに、前のものよりうまい』

 前のより?なんかディラが作るときに魔力が入ると作れないといっていたから、私たち魔力ゼロの人間が作ったからいい物ができたとか?

 街を囲んでいるベールというかバリアというか、薄い膜のようなものに視線を向ける。

 歩いて2日もかかるここからも上空に伸びたベールははっきりと見える。

「売れるかな……」

 街にも、魔力回復薬はあるかもしれないけれど、街で作られるものよりも高品質であれば……売れるんじゃないかな?

 街には魔力を持つ人しかいないはずだ。

 魔力がある人よりも、魔力ゼロの人間の方が魔力回復薬を作るのには向いているみたいだから、きっと……街の人が作ったものよりもいい物ができたのだろう。

 マナナの実を収穫できれば、たくさんの魔力回復薬ができる。1度使ってしまったらなくなるものではない。

 森では毎年収穫でき、そのたびに作ることができるものだ。入れ物となる瓶も、洞窟のスライムを倒せば出てくるローポーションの瓶を利用すればいい。

 飲み水の代わりに保存をと思っていたけれど、水の代わりになる物は、今までのようにまずい樹液だってかまわないわけだから。

 売れば、パンが買える。他にも、きっといろいろと買うことができるはずだ。

「売れるといいな。うん、売りに行こう!」

『ひぃっく。なんじゃ、売るとは、何を売りに行くんじゃ』

 う。完全に出来上がってますよ、ノームおじいちゃん。

「ノームさん、飲みすぎは体に毒です」

『にゃにを言う、ワシは精霊だぞ、体に毒なわけなかろう、ひぃっく。うーん、なんだか周りがぐるぐるして見えるの、風の精霊がいたずらでもしておるのか』

 酔っ払っていますね。

「今日は、これが最後です」

 空になった器に魔力回復薬を入れてノームおじいちゃんの前に置く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る