第18話
魔王軍との総力戦……ドラゴンまで現れて?
いったい300年前に何があったんだろうか。何がって、総力戦っていうのは分かるけれど、具体的にどんな戦闘があったのかはまるっきり想像できない。戦国時代の合戦みたいなもの?それとも世界大戦みたいな感じ?
エリクサーが埋まっていた近くにはクレヨンで塗ったような鮮やかな色のこぶしくらいの大きさの石もいくつか埋まっていた。水の魔石が水色のクレヨンのかけら……トルコ石みたいな鮮やかな色をしていたから、魔石かもと思って収納鞄に放り込んできた。
「ユキ!今日はついてる!肉が食べられる!3か月ぶりに捕まえた!」
3か月ぶりに肉?
自慢げに顔を輝かせてネウスが戻ってきた。後ろ手に隠していた捕まえた獲物を見せてくれる。
「見てくれ、こんなに太った砂ネズミを捕まえた。ユキ、食べてくれ!」
尻尾をつかまれたドブネズミのような生き物が、逃げ出そうともぞもぞと必死に動いている。
ね、ね、ね、ねずみぃーーーっ。
悲鳴が上がりそうなのを必死に抑える。
3か月ぶりの肉を、ネウスは「ユキ、食べてくれ」と言った。嬉しそうな、誇らしそうな顔をして……。私のために持ってきてくれたんだ。
自分だって食べたいだろうに。
でも、いや、あの……。
「ここじゃ、ほら、料理できないから。ありがとう。持って帰ろうか」
へらりと笑ってごまかす。ねずみはなぁ……。
『料理道具なら収納袋に入ってるよ』
うるさいディラ。
「ほ、ほら、火もないしね?」
『火の魔石も入ってるから大丈夫だ』
うっさい、ディラ、空気読め!
「あ……じゃぁ、絞めるから、血だけ飲んで……」
うひぃーっ、そうだよね。貴重なエイヨウゲンだもんね。血も無駄にしないですよね。
……だが、断る!
今はまだその時ではない。そう、どうにもならない食料事情になるその時まで……血を飲むのは勘弁してください。
現代日本人にはちょっとハードルが高いんで……。いや、地球でも血を飲んだり血を固めたものを食べたりという地域もあったんですよ。ただ、その、日本では一般的ではなかったので、ので、文化の違いってやつで……。
「こ、このまま持って行こう?ほら、これ、収納鞄、中に入れると時間が止まるらしいから、えっと、新鮮なまま持って帰れる、ほら、入れて、入れて!」
がしっとネウス君の腕をつかんで砂ネズミを収納鞄の中に入れることに成功。
はー。怖かった。怖かった。
収納鞄からパンとシチューと水の魔石を取り出して軽食。
「え?こんなご馳走……」
たかがパンとシチューという感覚なんだけれど、そうだよね。砂ネズミとサボテンの生活からしたらご馳走だろう。
「村のみんなにも食べさせてやりたい……」
優しい子だなぁ。
「村のみんなにも食べさせてあげよう。シチューならまだあるから」
ネウス君が喜んだ顔を見せたのは一瞬で、すぐに顔を曇らせた。
「俺、ユキのためにならなんだってしてやりたいのに、してもらってばかりだ……」
ぐっと悔しそうにこぶしを握り締めるネウス君。
「すっ、砂ネズミは私、食べたことがないから楽しみよ。村に帰ったら、一番おいしい食べ方教えてね。一緒に食べようね。それからサボテンの汁も美味しかった。また見つけてね」
ネウス君を励ますように慌てて口を開く……。
あー、これで、砂ネズミを食べることが決定しました。
……しました……。
だ、大丈夫、きっと、ネズミの姿がなくなれば……ただの肉……う、ううう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます