「君、可愛いね」のナンパモブだが、ヒロインのナンパに成功してしまった!
花果唯
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彼女を見た瞬間、オレは自分に与えられた『役割』を悟った。
足が自然に動く。
涼しげな水色のワンピースを着た、黒髪の美少女に向かって突き進む。
そして――。
彼女の前に立って進路を塞ぎ、声をかけた。
「君、可愛いね! 一緒に遊ばない?」
……このナンパは失敗する。
断られることは分かっている。
それが『必然』だから、傷つくことはない。
ただ、与えられた運命を全うする……それだけだ。
彼女をしつこく誘って不快にさせるのが、オレに――『ナンパモブ』に与えられた使命なのだ。
だから、ゴミを見るような目で見られても構わないし、スルーでもOKだ。
もしくは、イケメンが助けに来るパターンか?
だとしたら、もう少し強引に誘わなければいけないだろう。
「セクハラごめん」と思いながら、彼女の肩に腕を回す。
「!」
彼女がオレの行動に驚いている。
恥ずかしいのか、怒っているのか……顔が赤く染まっている。
どちらにしろ困惑しているだろう。
申し訳ないと思いながらも、「ほら、イケメンの出番だぞ」と待っていたら、彼女が声を発した。
「……喜んで」
「声も可愛いね! でも、『喜んで』なんて悲しいこと言わな……い……で? …………は?」
予想していた反応と違ったため、オレの脳は一時停止した。
「喜んで」とは、どういうことだ?
喜ぶ→嬉しい→好意的、肯定的→「遊ばない?」に対する回答、「OK!」
いや、まさか……。
信じられず、彼女に目を向けると視線がぶつかった。
黒の大きな瞳が揺れている。
「こうしてあなたに声をかけて貰える日を、ずっと夢見ていました」
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