第5話、ハーフ…いやダブルアイデンティティか



「驚きました。土・風・火・水の4系統を使われただけではなく、無詠唱でウィンドカッターまで使われました。

魔力量も倍くらいに増えています」


「このことは他言無用よ。マリーにも伝えておいて」


「はい」




こんな日々の繰り返しで3才になりました。


「ねえ、ライアっていくつなの?」


「80才ですが」


「あと120年か…」


「はい、寿命はそれくらいですね」


「僕が80才まで生きれば残りは40年。それくらいなら寂しくないよね」


「何がでしょう」


「僕と結婚して、僕が死んだ後で一人になる時間」


「まあ、光栄ですわ」


「冗談じゃないよ」


「でも、ジャスミン様はハーフですから、成人するまでどちらの性になるか分かりませんでしょ」


「ハーフって?」


「ご存じなかったんですか。ハーフというのは、男性と女性両方の性を持つ人のことです。

ほら、おちんちんの下に女性器があるでしょ。

10万人に一人と言われていますが、珍しいだけで普通に結婚できますからご安心ください」


「えっ、まさか…ホントなの」


「ですから、女性でもおかしくないジャスミンというお名前になったんですよ」


「そっか…、でも男だったら結婚してくれる」


「そうですね、それまでに好きな人ができなかったら」


「やくそくだからね。

ちょっと狩りに行ってくる」


「暗くなるまでには戻ってくださいね」


短剣とリュックを背負い、森に出かける。

唯一の問題は獲物を持てないことだ。

だが、それも昨日までだ。

森に入り、イノシシを倒した後で火を起こし肉を焼く。

そして裸になって体内時計を加速させる。


「ふう、こんなもんかな」


夕べ思いついてベッドの中で試してみたら、着ていたパジャマがビリビリに破れてしまった。

今日は物置にあった大人用の胸当てと、腰布を持ってきている。


「待てよ、両性具有ってことは…」


いったん元の状態に戻り、女性であることを意識して体内時計を加速してみる。


胸が膨らみ、おちんちんが引っ込んでしまった。


「ホントに女性になれるんだ…」


胸を触ってみた。しかし、勃起するはずのモノがなかった。


もう一度男の姿になる。

これの難点は、おそろしく空腹になることだ。


10kgほどの肉をたいらげ、狩りと魔法の訓練を再開する。


身体強化で10mの崖を飛び越え、さらに風魔法を使って空を飛ぶ。


『ウィンドカッター』 数百本の木が一瞬で切り倒されていく。


『エアードリル』 崖に空気を回転させたドリルで穴をあけていく。


「ふう、こんなところで帰るか」

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