第15話 美少女王子の異母妹1
「おかーさま、おかーさまはおとーさまとどうして結婚したの?」
「ふふ、そうねえ……お父様と一緒に居たら、幸せでいられると思ったから、かしら」
「幸せなの?」
「ええ、とっても幸せですよ」
「そっか!」
私譲りの少し垂れ気味の赤い瞳が、小さい頃の自分と重なりました。
きっと、あの頃の私もこんな風にキラキラした瞳を夫に向けていたのでしょう。
私が初めて夫クロード・アルノーに出会ったのは、私が僅か5歳の頃でした。
小さい頃の王宮は最悪な雰囲気でした。
お母様なんて怖い顔をしていた思い出しかありません。
けれどある時、少しだけピリピリした空気が緩んだのです。
疑問に思って私にも優しくしてくれる侍女に事情を聞いたところ、王様になるべきだと言われている、私とはお母様が違うお兄様が爵位の低い人と婚約したと教えて下さいました。
それでどうしてピリピリでなくなるのか分かりませんでしたけれど、そのお兄様がその令嬢と婚約している間は今のままで居られるということは理解致しました。
ですから隙を見て、そのお兄様に会いに行くことに致しました。
婚約を続けて欲しいとお願いしようと思ったのです。
そうして一生懸命、道を探しました。
出来れば誰にも見つからずに行きたかったから。
何故か知られたらいけないとそう思ったのです。
そうして何日も何日も探しまくって、ある日ようやくある所に出ました。
「あ、待て、ヨアンっ! 卑怯だぞっ」
「はははっ、悔しかったら捕まえて見ろ」
「このっ……ミュリエル! 挟み撃ちだ! そっちから行けっ」
「うんっ、逃がさないよっ」
「あ、こら、クロード! ミュリエル使うとか卑怯だぞ!」
「知るかっ! ミュリエル、絶対逃がすなよ!」
「任せてっ」
そこは天国でした。
皆笑顔で、楽しそうで、人目を憚らず声を上げて笑っていて、スカートを翻しても礼儀とかそんなことで怒られることもなくて、ただただ幸せだけがそこにありました。
ここは本当にあそこと同じ王宮内なのか、本当に私達と同じ人達なのかと混乱致しました。
「君はセシル姫かな?」
「!!」
見つかった!
ビックリしましたけれど、そこに居たのはとっても可愛い女の子でした。
「え、えっと……」
「怒るつもりはないから、緊張する必要はないよ。でも一人でここまで来るなんて、何か用でもあったのかい? それとも、迷子かな?」
このとっても可愛い女の子は誰なんでしょう。
可愛いのに、なんか変な喋り方ですし、大人の人みたいですし……もしかしてこの子も
どうしましょう。もしこの子がお母様側だったら、絶対怒られます。
「……ふむ。然るに、中に混じりたいんだな。ちょっと待ってな」
何かよく分からないうちに遊んでいた1人がこっちにやってきたかと思うと、手を取られました。
「よし、今日からお前も俺達の友達だ! 来いよ」
「え? は? きゃっ」
意味が分からなかったけれど、気付いたら思いっきり笑っていました。
産まれて初めて心から声を上げておりました。
初めての感覚で、気付いたらクロード様とミュリエルちゃんが帰る時間になり、私も慌てて戻ったけど大目玉を食らってしまいました。
お陰で数日抜け出すことが出来ずに、あれは夢だったのではないかと思ってしまうくらいでした。
けれど、数日後に行ったそこで3人共歓迎してくれて、また楽しく幸せな時間を送ることが出来ました。
あのとっても可愛い女の子が遅くなりすぎない時間に帰るよう言ってくれるお陰で、怒られることなく遊ぶことが出来たのです。
私はすっかり目的も忘れて、遊ぶことに夢中になっていました。
それから数年も経つと、あのとっても可愛い女の子もといフレデリックお兄様が王位を望まれている、私のお母様の敵で、フレデリックお兄様ととっても仲の良い物静かな女の子が婚約者なのだと理解しました。
勿論悩みました。
クリストファーお兄様は確かにお母様に王となることを望まれていて大変そうです。
けれど、シルヴァンお兄様は私がヨアン達と遊んでいることを知っているようで距離を置く必要はないと、フレデリックお兄様が王になっちまえばいいと、そう言ってくれました。
ですから、勉強のお陰で時間は減っていたけれど、遊びに行くことは止めませんでした。
皆も遊びまわるより勉強したりお茶をすることが多くなっていましたけれど、それでも通い続けました。
だって、そこでなら心から笑えましたし、とっても幸せだったのです。
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