第4話ベータテスターの工房
結局2人はその後、森でモンスターを見つけられず3時間が経過したところで町に帰ることに決めた。
「はぁ、結局あの経験値がおいしかった一角ウサギ一匹だったかぁ」
「しょうがないよ。リリース日だから人も多いし、そのうち運営も何とかしてくると思うけどさぁ」
「「はぁ…」」
と、2人はこのほとんど何にもなかった3時間への不満と歩き疲れた疲労が混じった大きなため息をはいた。
町に着いたルーンは、ふとあることを思った。
「ねぇ、シルクそういえば私たち装備を整えなくって良かったの?」
2人は現状初期装備であり着ているものと言えば装備判定にならない普通の服である。
「あーそれはね。私たちは、まだお金が初期の3000Gしか持っていなかったし、はやく森に行ってモンスターを狩ればお金は、増えると思ったんだけど…」
「見立てがハズレた訳か…」
「まぁそんなところだよ」
ルーンのきつめの一言にシルクは少ししょんぼりしながら答えた。
「じゃあこれから武器屋見に行かない?」
しょんぼりしているシルクを見てルーンは話題をこれからのことにずらした。
「ルーン話聞いてた?」
お金が稼げなかったことをまだ引きずっているシルクは低いトーンで言った。
「うん。とりあえず今日はどうせモンスターも狩れないし、今のうちに町の方を見に行こうと思っただけだよ。何かイベントもあるかもしれないし」
「しょうがないそれのった!でもどこの武器屋に行くの?」
ルーンの話を聞いてシルクもいつまでも落ち込んでられないと、その話に賛成した。
「それならとりあえずあそこに行ってみない?」
そう言うルーンの向く先には"アーチャーの工房"と、かかれた看板がでている店が建っていた。なかを見て武器屋であることが確認できた。
「まぁ大丈夫っぽいし、行ってみますか」
そう言って2人は、店のドアを開けた。その店の中には、たくさんの武器や防具、アクセサリーが置いていてそれぞれに値札がついていた。
「へぇーこの剣に【火属性付与】ついてるよ」
「うわっみてみてルーンこの杖10000Gもするよ。高くてまだ買えないけどスゴいなぁ」
シルクがさっきの落ち込みぐあいが嘘のように楽しんでいるのを見てルーンも少し嬉しくなった。
「よーしこの槍も上手くいった…あれ?君たちまだ店開けて無いんだけど」
そう言って店の奥から20代後半くらいの赤髪の男の人がでてきた。
「あっすいません。今お店でるので…」
ルーンは棒立ちしているシルクを連れて急いで帰ろうとした。
「あーいいよいいよ。気にしないで、どうせもうすぐ店を開けようと思ってたところだし」
そう言って男の人は、ルーンを呼び止めた。
「あっありがとうございます」
ルーンがお礼を言ってる時、シルクはあることにきずいた。
「あの…もしかしてベータテスターの方ですか?」
シルクが少し恐る恐る聞き、それに男の人も笑いながら答えくれた。
「はははっ、そうだよ。ちなみにこの店もベータ版時代に買ったものだよ。」
「えっじゃあ結構強いですよね?」
シルクは、男の人に立て続けに質問をしたが、それにも親切に男性は、対応してくれた。
「まぁベータ版の限界値のレベル10までは、いってるけどね。」
「ねぇねぇシルクさっきからいってるベータ版って何?」
「ベータ版っていうのは、いわゆる試作品のテストで、半年くらい前抽選で当たった人が先行体験したんだよ」
シルクが詳しくルーンに説明していると、男の人もはなしにまざってきた。
「ちなみにベータテストでは、イベントもあってそこでの順位で今回の製品版のベータテスター特典になっているんだよ。ちなみにぼくはそこそこ順位がよかったからこのお店をとれたんだよ」
「えってことは、鍛冶職人兼弓使いのエイルさんですか?」
シルクは、驚いた表情で男の人に尋ねた。
「うんそうだよ。そんなに僕有名だったっけ?」
「それはそうですよ。鍛冶系統のスキルを取りつつベスト8なんてとっている人ほかにいませんでしたし」
興奮しながら喋っているシルクに少し照れながらもエイルは謙遜した。
「全然スゴくないよ。ただ運が良かっただけでやっぱり上位のプレイヤーには、瞬殺だったよ」
「それで、君たちは何を買いに来たの?」
エイルは、本題の方へ話を戻そうとした。
「いや買いたいけどお金も初期のままですからまた…」
そう言ってルーンが帰ろうとしたとき、シルクに腕をつかまれた。
「ルーンあの角を出してよ」
シルクが言葉でルーンは思いだし、ルーンはそれに対してすぐにアイテムボックスから角を取り出した。
「これ何かしりませんか?」
「これは…何の角かな?」
エイルにも角であることはすぐに分かったが、何の角であるかは検討もつかなかった。
「一角ウサギのドロップ品です」
それを聞き、エイルも角を手に入れたときの2人同様驚いた。
「えっでも一角ウサギってドロップアイテムなかったはずだよ」
「ですよね。だから私たち不思議で…」
シルクはトッププレイヤーなら何か分かるかもしれないと思い、エイルに相談したのだがエイルにもさっぱり分からないらしい
「じゃあほかにおかしなことは?」
今までエイルも聞いたことの無い事例だったためエイルも興味を持ってはなしを聞いていた。
「あっ、あと経験値が結構よくてほかに何も倒して無いのに今レベル3なんです。」
「確かにそれはおかしい…とりあえずその角を渡してくれないかな?何か作れるかもしれないし」
エイルは、今まで無かったことであることを理解し、まずドロップ品である角で何か作れないかを考えた。
「はいわかりました。けど返して下さいよ」ルーンは少し念を押しながら角をエイルに渡した。
「さすがに盗むことはしないよ。そんなことしたらアカウントがなくなるかもしれないし」
そう言ってエイルは奥の作業場に入っていった。
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