空白の名前

染井綾

顔だけの知り合い

 秋と呼ぶにはあまりにも寒く、冬と呼ぶには木々の生命力が目の前に広がる朝。私は身を縮めてバスを待っていた。

 何もない日常で、毎朝同じようにバスを待つ。乗客の半分くらいはいつも顔を合わせている。知っているのは顔だけで、名前も声も知らない。そんな不思議な関係。

 この関係を知り合いと呼んでいいのだろうか。もし、名前をつけるなら何なのだろうか。顔見知りと言うにはあまりにも一方的すぎる。知り合ってはいないのだ。ただ一方的に知っているだけかとしれない。

 そんな奇妙な関係のことを考えながら、今日もいつもどおりの日常が始まる。

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空白の名前 染井綾 @_Ryo

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