梔子の花は枯れず

梔子の花は枯れず

ただ一輪として朽ちず

果てしなく昇る夏雲の白さを

その面に留めて


漣は凪がず

ただ一波として静まらず

絶え間ない青い流れにいつか

遠く帰るために


空は果てず

ただ一色ひといろには消えず

夏の夕焼けの最も強い赤は

不意に飛ぶ白鷺の血の一滴に溶け


純金の鈍さをまやかしと呼んでいる

細いうなじの少女の声は

いついつまでも

どこであっても

そこに確かにある


声の奥底に遡り見つけた

語り継がれることのない炎と

そして

時が遡る星々の海の銀の魚を

生まれる前の言葉と呼んだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る