第68話

「ナオト君、どうやら戦争は避けられないようです」


1人で頑張っても限界はある、それはそうだろな


「俺の努力は無駄だったのですか?」


「いえ、多少は打撃を与えることはできましたが決定的にはなってないようです、しかもインフレ起こすつもりがデフレに陥ってしまっているようです」


ああ、パンの値引き合戦が他の物にも営業したのか、オレが帝国に卸している商品のメインは古着だが、それ以外に塩胡椒砂糖もある、質のいい調味料を売っていたが市場よりも安い価格で売っていたのだ


よそが高い価格で売るわけがなくうちと同じかそれ以上の価格にしているのだ、物の価値が落ちるのは当然だ、しかも俺は仕入れは日本で行い、売れた通貨は帝国に落とすこともなく手元に全部持っている


日本と違ってこちらの通貨は金貨とか銀貨だ、紙と違ってどんどん増やすことはできない、市場に通貨がなければ物価はどんどん下がっていく


民衆の手元に通貨がなくなって物が買えなくなってくる、そしたら商人の値段を落とすしかなくなる、負のスパイラルだ


「インフレでなくデフレであっても経済に打撃を与え戦争どころじゃなくなるのでは?」


「皇帝はこの度暴挙をしたのだ、うちの商人ギルドからのパンの没収、形上では買取だが1斤300ゴールド、支払いは戦争の終結後」


「それでは実質上は0ゴールドじゃないですか、負けたら払われないのですから」


「その通りだ、まさかこのような方法を取ってくるとは完全に想定外だ、この後どんな方策を打てばいいのか」


できる手はないことはないが、余り使いたくないんだよな


「方法はないことはないですが、この方法だとかなり民衆に犠牲が出ます、フォーセリアの民衆を守る為に帝国の民衆を犠牲にするのは得策ではないと思います」


「一応聞かせてくれるか?もちろん聞いたからと言ってそれにするというわけではないので安心して欲しい」


「はい、俺は今回の件でかなり帝国のゴールドを集めることができました、それを全部使い帝国の食料を買い占めるのです、そしたら民衆は食べる物がなくなり、暴動になるかもひしれません」


そんなことをやれば多数の民衆対帝国軍で争いが起こる、こちらに攻め込むどころではないが、犠牲にしていいものかどうか


戦争で犠牲になるのはあくまでも職業軍人だけでいいのだ


「それはそうだな、他に打てる手はないか?」


「純軍事的な意味でいくと勝算はあるのですか?」


「ないだろうな、帝国の兵力はこちらの5倍はある、しかも周辺諸国に常に戦争を仕掛け経験値もかなり違う」


精強な大軍対脆弱な軍 勝てるわけがない、後はどんな方法があるかな、手がないわけではないが面倒だからと危険が伴うからあまりやりたくはないな


「いつぐらいに侵略してきます?」


「おそらく1ヶ月以内ぐらいで来るでしょうね」


余り時間がない、しょうがない、行ってくるか


「わかりました、なんとかやってみます」


「何か方策があるようですね、お願い致します」


「準備して欲しい物があるのですが宜しいですか?」


「なんでも言っていただければ用意いたします」


ヒルダさんに用意してもらったのは最高魔力水、エリクサーを20本ぐらい作る、最高魔力水さえあれば指輪で簡単に作ることができる


さてと行ってくるか、行き先はサダムさんの所


「サダムさんが急に帰国したのって親族の方が急病になってしまって故国のことをサダムさんが管理しないといけなくなったからですよね?」


「はい、おっしゃる通りです」


「もしですよ、もし私がその方の病気を治すことが出来ると言ったらいくらの価値を付けてくれます?勿論だ成功報酬で大丈夫です」


「仰っている意味がいまいち不明ですが、治して頂けるなら私にできる権限でなんでも致します」


「そうですか、それではその方に会わせて貰えますか?」


病人はサダムさんのお父様、国の王族の1人でかなり重要な人物、今命を落としてしまうと政変が起きてしまう可能性がある、それを防ぐために急遽サダムさんが帰国した


後継者として認めてもらわないといけない時期なのだが、まだサダムさんは30代、力不足を疑われていて中々に認可が下りないのだ、1番良いのはお父さんの回復、だが原因不明のウイルスによる身体の消耗、だんだんと体力が落ちていき、このままでは死んでしまうそうだ


ウイルスの解析は急務だが、何からどのように感染したかもわからない為ウイルスの特定は苦労しているようだ


俺が取り出したのはエリクサー、万病を治す魔法の薬品だと言われている、これさえ飲ませることができれば治るだろう


「これは非常に高価な栄養ドリンクです、こちらを飲めばお父様の体力を回復させることができ、ウイルスも追い払うことが出来ます、お父様に飲んで頂いていいですか?」


「そんな怪しげない物を私に信じろと?」


「サダムさん、ここは貴方の国で私は他所の国の人間です、嘘を付けば私はこの場で銃殺される可能性もあります、そんな危険なことを私がするとお思いですか?私は商人です、自分の損になることなど、致すわけがないですよ」


「貴方の商人としての矜持に賭けましょう」


なんとか飲んでもらうことに同意をしてもらった、一応持ってきたエリクサーは20本、俺が試しに飲みますからなんて無駄に使うことはできない


案の定ではあるがサダムさんのお父さんは元気に起き上がった、手を握ったり開いたりしながら自分の体力が少し回復したことを試していた


今までかなりの体力を消耗していた為全快と言うわけにはいかないが顔色はかなり良くなっている


「サダムよ、今までにない爽快感だ」


「お父さん元気になってくれて良かったです」


効果の継続を確認する為に3日間ほど慰留した、これで回復が確認できたら次の交渉に入ることにしよう。

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