第61話

「テレサ、うまくパンは作れるようになったかい?」


「はい、配合も覚えましたので、日本の味にほぼ同じ味に仕上げることができましたよ」


テレサは有能だな、後はどんどんパンを焼いて帝国に持っていく、そして帝国の財力を全て巻き上げる


パン如きでそんなことが可能かと疑われるかもしれないが、町民も兵士も残らず食べる食材だ、それだけに依存度が高い商品になると言えよう


でも明らかに人員がたりてないし、窯も必要だな


「ちょっと出掛けてくるからばんばん焼いててくれ」


俺が向かった先はアステルの工房


「親方ーいるかー」


「居るぞ、酒でも持ってきたのか?」


「いや、今回は別件だ、大きな釜を作って欲しい、帝国でパンを販売するんだけど、こっちで作って持っていくんだ」


「ほう、どれぐらい焼ける規模の窯が欲しい?」


「最終的には30,000トン持っていきたいんだが」


「そりゃ何個分のパンだよ」


「食パン一斤が12,000,000個だな」


「そんなでかい窯どこに建てるんだよ、豪邸ぐらいの規模の窯でないと間に合んぞ」


ファステルで1番余ってる土地はスラムだ、この世界では区画整理がないかのようだ、そこを有効利用しよう


「スラムとか場所余ってないか?あそこならテントだらけだから直ぐに撤去しちまえば場所は確保できるだろ」


「あそこに住んでる奴らはどうするんだよ」


「仮設住宅でいいだろ、テントよりはだいぶましだ」


日本でプレハブを何軒かこちらに持ち込んで住まわせればいいと考えていた、1軒100万ぐらいで10軒もあればみんな住めるだろう、それぐらい寄付でいいや


「じゃあ仲間の職人に声掛けてやるわ」


「宜しく頼む」


仕事が捗るようにお酒でも用意してやるか、ビールでいいや、冷たいビールなら歓迎されるだろう、後はプレハブだな、ホームセンターで売ってるから買えばいいか、熱効率が悪いがテントに比べたらましだろう


ただパンを作る為にかなりの回り道だ、まさか町の整備にまで手を出す羽目になるとは思いもしなかったな、じゃあ戻ってプレハブとお酒買いに行ってくるか、帰ってきたらスラムか、ちょっと怖いな


スラムに行くにあたり、ハルクを連れて尚且つライフルも持って行こう、魔物狩りのつもりで買ったのに護身用に所持するとは思わなかったな、今回は予想外のことが多すぎる。


空いてる場所にどんどんプレハブを置いていく、余り下手に出ると舐められるので


「おいっこれやるから住んでいいぞ」


みんなテントを畳んで殺到してくる、これでかなりの空き地が出来た、すぐに親方を呼んでこよう


「おめぇそんなやり方してたら日が暮れるわ」


「うるせぇお前の作ったものろくなもんないじゃないか」


ドワーフが10人も集まると五月蝿い、しかもみんなマイルールが多すぎてほんと捗らない、このままじゃまずい


「進捗に合わせてお酒を景品で出すぞ、最高級のウイスキーだ、口ばかりで手を動かさない奴にはビールしか渡さないからな」


みんな協力できるんじゃん、無口でどんどん働いている、今日中に窯ができそうだ、今のうちに生地を用意しておかないと、ほんとパンって時間かかるよな、毎日専門で作ってる奴の気がしれない、ほんと脱帽だ。


生地をこねてる現場に行くとギルドが集めたメンバーが慣れない手つきでこねている、テレサを手招きをして呼び


「どうだ?捗ってるか?」


「ちょっと厳しいですね、人さえ集めれば良いと思われたみたいですね」


効率が悪いなら人海戦術で打破すればいいか、増員要請をしよう、テレサ1人で10人並みでこね終わっていく、生地を寝かせるのに一昼夜必要だ、今日中に終わらせないとあした焼成に入れない


もうお店も終わってる時間なのでシルキーとフレイヤにも手伝わそう、あいつらでもこの不器用集団よりはましだろう、頭でっかちには肉体労働は向かない典型だ、もちろんオレはしない、頭でっかちで不器用の自覚ある


元々ヒルダさんが言い出した話だし、あの女にもやらせたいものだ、多分やらないだろうなぁー


商人ギルドに増員を言うと


「それは申し訳ないね」


とギルド長が手伝いをかってでてくれた、ヒルダは


「私が出向くとみんな見惚れて手が止まって困りますし」


もう言葉がない、反論はやめておこう、パン作りは夜中まで続いていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る