第34話

ファステルに帰るために俺は跨がりエンジンを掛けた


そう、日本で用意した秘密兵器とはオフロードバイクのことだ、マジッグバッグにはどんな大きさの物でもどんな容量でも入る


バイクのような大きな物でももちろん入る、ガソリンも大量の携行缶で用意した


ファステルまで1000キロ、頑張れば1日で帰ることも可能だ、時速60キロとして16時間、ホントに頑張らないとだな


道が整備されていたら100キロは出せるがせいぜい土で舗装された道、60キロが限界であろう、まずは王都を目指す。


王都までは約300キロ、6時間で着ける予定だ、護衛もないので止まれば魔物に襲われる可能性もある、気が抜けない、ノンストップで走り続けるのも辛い


車のナビなら2時間ごとに休憩を促してくる


緑の小人が寄ってくる、多分ゴブリンと言う存在であろう、走ってくる分には追い付かれることはないが弓でも持ってたりしたら危ない、幸い飛び道具はなかった為、軽くかわすことが出来て良かった。


秘密兵器として用意したバイクだったが思いの外危険だな、かなり命の覚悟しないとこの先無理かも知れない、王都に着いたら護衛を雇うことにしよう


馬車だと時間かかりすぎるので騎馬での護衛、それならバイクで併走すれば馬車の3倍の速さで進むことができる


まずは気を抜かずに周りを見渡しながら行こう


王都に着いた頃にはもうヘトヘト、生きた心地がしなかった、いつ何かに襲われるかも知れない恐怖、誰にも相談せずに思い付きでのバイク移動がここまで危険になるなんて


まずは商人ギルドへ行き、冒険者ギルドの仲介を頼み、そこから依頼する


条件はファステルまでの護衛、馬での移動だ、かなりの強行軍になってしまう為高額になってしまう点は承知した。


やはりCランク以上は欲しいところだ、迷走の猪がCだった為それ未満だと安全性が問われてしまう


明日の朝の出発に間に合わせるには今日中に見つける必要がある、既に時間は夕方、依頼を終えた冒険者は一杯やってる人たちも多く、酔っ払い相手は気が重かった。


それでもまともに話を出来る人たちを紹介してもらうことができた。


暴風の疾駆者 Cランク

リーダーは盗賊のフリオ

剣士のアイゼン

女メイジのポーラ

僧侶のギャリー


厳しいスケジュールだったが通常1日銀貨1枚を2枚に倍増することによって受けてもらうことができた


前回の迷走の猪に比べたらキャラ的には余り面白くなさそうだが、腕は立ちそうだ、マークみたいなのがたくさん居たらうっとおしい。


一応バイクは魔道具ってことで誤魔化しておいた


帰りの目処も立ち、早めに宿を探す、清潔で飯がうまければどこでも良いが、それが中々難しい、前回ヒルダと泊まった宿は満室だ、この世界に予約とゆうものは存在しないので早い者勝ちだ


電話もパソコンもなければ予約自体不可能だ、中々これといった処が見つからないが、一晩だけだ、もう希望なんてどんどんハードルが下がっていく、もうここでいいかって決めた所はちょっと汚い。


看板は字が消えかかり、かろうじて"労りの藍染亭"とあった、宿代は驚きの1泊銅貨20枚、飯は用意されておらず、外で食べてきてねと言われた


疲れていたのでそのまま寝ることにした、部屋の中も年季は入っていたが丁寧な掃除で埃もなく、シーツも綺麗だった、ベッドは中のクッションが痛んでいたらしく、寝返りを打つたびに段差ができてはいたが、特に気にはならなかった


後残り700キロ、馬車の3倍の速さで進むことができるので2、3日でファステルには着けるだろう、兵士が戦争準備に取られ王都の周辺は魔物が大量に湧いていた。


何度か自分もすんでの処で襲われそうになったが紙一重で暴風の疾駆者の面々に助けられた、護衛を雇う選択で良かった


1人では今頃野垂れ死だ、こんなところで死んでも誰に知らせることも出来ず、野晒しになることは間違いない


王都から離れるにつれ、魔物の数も減り、ファステルから残り数時間といった処で暴風の疾駆者から提案があった


魔道具と言っていたバイクの購入の相談だ、傍目で見ていて有益さに注目をされた、餌代の代わりに燃料代がかかる点と物自体が高価な為要検討となり、即購入とはならなかった


30万円ぐらいで買ってはきたが、金貨1枚と吹っ掛けた、こう言えば諦めてくれると思ったのだ、4人分ともなると金貨4枚、Cランクの平均月収は銀貨20枚、月収の5ヶ月分、移動のためには高すぎる


必要になったら俺の店に来てもらうことを約束し、ファステルの城門で別れた、これでやっとテレサたちに会える、みんな無事にお店やってるのか心配だ。

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