第24話

私の名前はヒルダ、ここファステルで商人ギルドの副ギルド長をしている、入って5年でここまでの地位に昇るのは異例の早さ、私がいかに優秀かの証明だ。


「いらっしゃいませ、商人ギルドへようこそ」


本当は受付は専門の係りが居るのだが大事な顧客(かも)の確保の為に高確率で私が受付をしている。


今日のお客さんは王都に本店を持つホンテック様の、ここファステルでの支店を開く為のお手伝いだ


商人ギルドは税金と会費を頂くことで無料で色々なアドバイスをすることを業務としている、税金は国に納めるが会費はギルドの大事な収入源だ


後は商品の買取も行っており、王都へ送り、そこから外国へ販売することも業務としている、逆に外国からの商品を商人に卸す業務も行っている。


外国とのやり取りは貿易部門が行っており、私は業務には関与してなかった、貿易部門の長は私と同じく副ギルド長のオゴダイだ。


オゴダイは長年ギルドに在籍しており、元々はどこかの商人の三男である、親としては優秀なオゴダイに継がせたがったようだが、長子相続が常識としてる為、出されたようだ。


一応ライバルにはなるが私はこの地位で満足である、ギルド長になるとほぼ受付ができなくなり、大事な顧客の相手が出来ない


さてホンテックさんの物件の確保でもしよう、商材は古着屋さんで店の規模はなるべく広くか、この町の全ての不動産は商人ギルドで管理している、販売や賃貸だ、この町を出ていく人には買取を、亡くなった方からは没収もしている。


(100坪ぐらいで良いかな、必要なら2号店も出せば)


このファステルの店舗面積は全体的に狭い、城壁で囲まれている為広げることが出来ないことと、ワララント帝国との戦争が続いている為王都からの避難民も殺到してかなりの人口増加により一般住居への転用も多い。


(スラムのテント群がなんとかなればなぁー)


避難民の影響で町の入り口近くはスラムが出来ている、何度撤去しようとすぐに形成される、根本から解決しないとダメなのはみなわかっている


*戦争の終結

*町の拡大

*孤児の保護


全部すぐには解決できない、孤児の保護ならすぐ出来そうだが、土地がない、土地を確保する為には町の拡大だが、戦争の為予算がない、戦争は生産になんら寄与するものではない


(私が解決する問題でもないわね)


そうは思うが元々は貴族の出だ、全体的な視野があるのは教育の賜物である。


元々伯爵の長女であったが、婚約者・使用人に対する暴行で放逐されてしまった、婚約者には精神的にプレッシャーをかけ相手の侯爵は20代という若さではあったがみるみる髪が抜け落ちていき、最後は胃腸炎で長期療養を強いられた


使用人に対しては過度の労働、食事代・賃金のピンハネ、9割の使用人の辞職によって悪事が露呈することとなった。


それでもヒルダは悪びれることはなく


(みな脆弱なのが悪いのよ)


と自責ではなく他責にしてしまった、反省の色がない伯爵当主も庇い切れるものではなかった。本人は


(私に伯爵なんて器が小さすぎる、もっと強大な地位を自分で掴んでやる)


と成り上がることを決意していた、その為には資金力と今日もピンハネをすることに余念はなかった。


そんなある日運命の出会いをする


「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょう」


ナオト登場である、実はこのナオト王族である


ナオトの祖母は先代の王の妹、祖母の元の名前はハルカ杉山、結婚する前はコンビニ内親王と言う称号を所持していた


お店の名前の"こんびに"はコンビニエンスストアの意味ではなく、祖母の称号名だったのだ。結婚して称号を失ったハルカが名前を残したくてお店の名前に利用した


通常であれば店舗経営者がなくなるとお店は没収されるのだか、王族で趣味でやっていた店舗を没収されるわけもなく、そのまま放置されていただけだ。


もちろん税金も永久免除、会費など取られることもない、それは物件管理しているギルドでも把握はしているが


ナオトが王族である情報はヒルダしか知らない、ギルド長に説明してあったのは


「内親王の親族が雇った従業員が代わりに店舗行うようで、その人物がナオトと」


こんびにで扱う商品のインパクトはギルドの中でも有名ではあったが3年ほど前にハルカが他界し、商品が入ってこないことは残念に思っていた


こちらから現代へと商品を仕入れに行きたいのは山々だけど誰もドアを通り抜けることはできない


ナオトが提示した商品を見てもさほど驚きもしなかったのはそんな背景があったからである


(これはチャンスだ、私が成り上がる絶好の機会、獲物は絶対に逃さない。)


ナオトを自分の結婚相手と見定めるが、婚約者にも精神的プレッシャーをかけたヒルダであるからアピール方法が独特だ


(私に惚れさせるのは追々していくとして、まずはうまく話をもっていかないと)


「それでは滞納している税金と会費をお願いします。」


「それではグラス2000個で」


「アドバイス契約半年分で」


これらのやり取りは全て嘘、税金も会費も掛からない(ナオトだけ)


アドバイス料は会員ならみな掛からない


因みに不動産もギルドが管理している為キャンセルは簡単だ


ヒルダの暴走はまだまだ終わらない。

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