特別編「先輩はよく転ぶ」~~ちょっと息抜き~~


「先輩、今日どうしたんですか?」


 俺はある朝、いつも通り先輩と学校に向かっていると彼女のある異変に気が付いた。


 それは——


「なんで今日は——タイツはいてるんですか?」


 いつもは面倒くさがって何も履かないだらしない先輩だったはずなのだが、珍しく今日はそれを履いていたのだ。その成長ぶりって言うか、気まぐれなのかはわからないが今の驚き程度には俺は喜んでいる。

 

 え、どうして嬉しそうにしているのかって?


 それはもちろん、俺がタイツフェチだからだ。あの脚線美には絶対にタイツが合うんだと前々から思ってはいたのだが、私生活を覗けばすぐ分かるように彼女には身だしなみと言う概念が少し欠けている。


 元々の素材は良いし、それなりの格好はしてくれるのだがそれは男の範疇で女の子がするそれとはかけ離れている。


 だからこそ、俺は今。


 すこしだけ興奮しているのだ。


「あ、うん……なんか肌寒くなってきたしね!」


 自信なさげな表情を後から追い上げてカバーした先輩だったがしかし、俺はそれを見逃した覚えはない。そこで俺はさらに追及した。


「まだ夏ですよ?」


 追求と言うか——むしろ、どっちかと言えば論破みたいなものだったがな。


「……あ、そ、そうなんだね? へぇ~~私、初めてシッタナ~~!」


「いや、スマホとか黒板とか、いろんな場所に書いてるでしょ7月って」


「し、7月って夏なの!?」


「先輩、そういうのはめんどくさいですよ?」


「っう——ご、ごめんなさい」


「それでいいんですよ、んで、それで……どうしたんですか?」


 顔を顰める彼女。

 別に怒ってはいなかったがどうやら頬を赤らめている。少し恥ずかしいらしい。


「……恥ずかしいなら、どうしてはいてきたんですか?」


 いや、みんなも感じている通り俺もこの台詞に若干の違和感は感じているよ? むしろ、タイツを履くことは悪いことじゃないし。


「熱いのに履くなんて……とおいうよりは、あんなにも面倒くさがりな先輩が吐く案てあり得ないですよ……?」


「お、おおげさな……」


「まさか! 俺たちはちゃんと調べてるんですよ?」


「うっ……そ、そんなぁ……」


「別に言いふらしたりしないですって……言ってくださいよ~~」


「じゃ、じゃあ……」


 そして彼女は最大級に頬を赤らめてこう言った。


「わ、私! 転んじゃったんです!!」


「そんなことかいっ————!?」

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