敗腐ノ宝 二

「次いつ来れるか分からんからな」


 その言葉に嘘偽りはなかった。


 実際俺の身体はあと何年持つか分からん。


 歳を食うことによって少しずつ意識が薄れていくことが多くなった。


 それもある、それもあるのだが。


 もう一つ懸念があった。


 杞憂きゆうであって頂きたい。


 その太平洋に今にも石炭、石油など、数億年の年月を経て生成された有機物を電気と呼ばれる万能エネルギーに変えては地球温暖化現象を引き起こし小島と判別させたこの島に沈むことを余儀なくされる。


 一部の学者は地球学的に氷河期が訪れ地球平均気温が零下四度下がると推測しているがそれもまことしやかに信じがたいものだった。


 論より証拠と呼ばれる様に地球平均気温のグラフは鮭の川上りのように上がっていく。


 何は人だけでは飽き足らずこの島も食すだろう。


 その元凶は我々人類なのにな。


 その前にこの戦友戦車に別れを告げたかった。


 あと何度来れるだろうか。


 ………。


 噂をすればだ。


 また来たか。凄まじい強い眠気。


 古希七十を迎えてからかこれが習慣となってしまっている。


 最初はただの昼寝感覚だったが三ヶ月も続けば病の種と思い始めてくるのも無理はなかった。


 一応、国の保険を使いMRI?とかいう奴を使い脳を調べたが異常は見られなかった。


 この国技術も良くなったとも思えるが良いか悪いか。


 のちに知ったがこれがあの原爆を元に作られた物だと知った時は驚かされた。


 憎きあの核の光は、あの目に見えぬ原子の光は使い方によっては人を解体せずに見れる物にさせるとは。


 物は使いようとは言うがここまで。


 化学技術というのは発展するほど革新的になるほど戦時にななった際には人類の敵になるものだ。


 戦前、汽車ほど便利な物は皆無いと思えるほどだった。


 しかし戦時になった瞬間、それは軍備を最速で運搬するものとなり、最速で兵を動かすものとなり、捕虜の死の箱へと化していく。


 車も同じだ。船も同じだ。科学とはそう言う物だ。


 ダイナマイトも本来は鉱山を効率的に発掘される為に作られた、飛行機も空に憧れを抱いた音たちが作った物だ、核も増えずぎた人口を裕福にさせる為に膨大なエネルギーを生み出す目的として作られたものだ。


 しかし軍部はこれらの機器を人を殺す為に作らせたものだ。


 人に恩恵を与える物は人の意思で思想でいとも簡単に人を死に至らしめる。


 悲しいな。人類の敵は人類とは。


 これが墓穴を自身で掘ると言う事だ。


 ……。


 これ以上起きていると強制的に脳が眠る。


 戦友に腰を下ろし、瞼を閉じる。


 海馬の底の底に沈めていた記憶が海豚が貯めていた息を吐き出す為に海面に上昇する速度と同等で浮かび上がってくる。


 思い出したくもない記憶。捨てようとも捨てようとも、忘れようとも忘れようとも、肉に群がる蛆虫のように蘇る。


 今の日本ではトラウマと言うのだろう。


 生物学では危機管理能力によるもので同じ恐怖体験が行われた際に前回より速い速度で対処できるようにする為のものであるとされている。


 いや実際この記憶は良い効果を発揮した。


 アメリカ南北戦争の際の名言、アメリカ将軍の友が言っていたある言葉を思い出した。


「戦争がむごたらしいのは良い事だ。でなければ我々人間は戦争を好きになりすぎる」


 と言う言葉だ。


 的確で正論で人間の本質の皮肉った喜劇のような言葉だ。


 実際そうだ。孫に見せてもらったゲームと言うものをやった事がある。


 FPSと呼ばれる戦争ゲームが今現在流行っている。


 よく言われる事はこれはただのゲームで二次元内で電子演算で行われている事だ。


 だがやっている事は違わない。


 仮想の敵を殺す・・と言う事には変わりはない。


 やはり人というものは誰でも生を貪りたい獣である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る